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出来上がった本を見て夫は「俺、これ食べたことないよ」と

──お姑さんが著名な料理愛好家の平野レミさんだというプレッシャーは、いまでもありますか?

 ほとんどないです。名前を傷つけるようなことはしちゃいけないなとは思いますが、その程度かな。

 私がおかあさんの料理を食べて真似てつくることもありますし、私の料理をおかあさんが食べて「これいいじゃん、私もやってみる」と真似してくれることもありますが、どっちがいいとかダメとかは一切ないです。

 子どもたちも、私の料理とおかあさんの料理は、全然別物だと思っているんじゃないかな。まったく別の店に行って食べている感じじゃないですかね。もしどちらかがより好きだとしても、そんなの恐ろしくて言えないですよね(笑)。

──お義兄さまの和田唱さん・上野樹里さんご夫妻や、故・和田誠さんから、お料理をリクエストされたり、褒められたりというエピソードがあればぜひ教えてください。

 残念ながら、そんな美談はないですね(笑)。本当にいきあたりばったり家族なので、おかあさんが「今日あーちゃん家でご飯食べるよ!」って唱ちゃん・樹里ちゃんに電話して突然集まることになることもありますし、かと思うと、おかあさんから「今日肉が届いてこれから焼くから食べにきなさい」と強制集合がかかることも日常茶飯事です。つくったらいつもみんな「おいしいね」と食べてくれますけど、ドラマみたいに「やっぱりあーちゃんのご飯はうまいなあ」みたいな感動的なエピソードはないです(笑)。

──ご著書に関して、ご家族で話題にのぼったりはしましたか?

 夫はわたしの本にある料理を見て、「俺、これ食べたことないよ」と言ってました。いや、あるから(笑)。

 私、二度と同じものがつくれないんですよ。その時に手に入る食材とか気分とかで変えるし、味付けもいろいろ試しちゃうので、家族が「あれが好き」と言ってくれても、二度と同じ料理は食べられないという……(笑)。

 「得意料理はなんですか」とか「ご主人にいちばん喜ばれる料理はなんですか」とかよく聞かれるんですけど、同じ肉じゃがでも、豚肉の日があれば牛肉の日もあるし、脂っこくジューシーにつくる日があれば出汁でさっぱりつくる日もあればトマトの肉じゃがの日もあるので、家族はわたしの気分に付き合わなきゃいけないから、ちょっとかわいそうかも。

──お時間のないときや、どうしてもお料理をしたくない日は、どうされているのですか?

 焼きそばとか、ひとつの鍋で完結するようなものをなんとかつくるか、もう諦めてビール呑んで「何つまみたいかな」と考えながら少しずつ出すか、音楽をガンガンにかけて自分でアドレナリンを出してやるか、開き直って外に食べに行くか……。いくらでも選択肢があります(笑)。

 料理って、結局、「こうあらねばならぬ」みたいなのはひとつもないんですよ。みんなちがって、みんないいんです。それが料理だと私は思っています。

» インタビュー【後篇】に続く

和田明日香(わだ・あすか)

料理家・食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、“食育”や“家族のコミュニケーション”をテーマにした全国各地での講演会やイベント出演、コラム執筆、ラジオ、CMなど、幅広く活動する。前作の『10年かかって地味ごはん。』(主婦の友社)は2022年、第9回料理レシピ本大賞in Japan料理部門入賞。2023年2月に発行部数25万部を突破。2021年からスタートした自身初の冠番組となるRKB毎日放送『和田明日香のア・レシピ』は毎週土曜日オンエア。他レギュラーにNHK-FM『眠れない貴女へ』、テレビ朝日『家事ヤロウ!!! リアル家事24時・お悩み解決レシピコーナー』など。

楽ありゃ苦もある地味ごはん。

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定価 1,496円(税込)
主婦の友社
2023年3月3日発売
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次の話を読む平野レミの嫁、〇〇ちゃんのママ 「代替可能な存在に感じた時期も」 そんな和田明日香を救った地味ごはん

2023.03.03(金)
文=相澤洋美
写真=鈴木七絵