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 気さくで飾らない人柄と、生活に寄り添った料理が人気の、料理家、そして食育インストラクターでもある和田明日香さん。レシピ本としては異例ともいえる25万部もの大ヒットとなったご著書『10年かかって地味ごはん。』の第2弾『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』が発売になります。和田さんが「大好き」と話す「地味ごはん」への思いをお聞きしました。(インタビュー【後篇】を読む)


代り映えしないことが「おウチごはん」の愛すべきところ

──2021年4月にリリースした『10年かかって地味ごはん。』は、累計発行部数が25万部を超え、2022年料理レシピ本大賞に入賞を果たすなど、大きな話題となっています。発売時はここまでのヒットとなることを予想されていましたか?

 正直、予想外でした。それに、第1弾は本当に発刊のタイミングがよかっただけなんですよ。

 家事初心者のMC3人が家事をゼロから学んでいく『家事ヤロウ!!!』というバラエティ番組に出させていただいているんですけど、その番組がちょうどゴールデンに時間変更するタイミングだったり、『セブンルール』というドキュメンタリー番組でも取り上げていただいたりして、「和田明日香って誰?」と興味を持ってくださった方が多かったんじゃないかと思うんですよね。だから、いまでも自分の本だから売れたというよりは、「メディアの力ってすごいな~」という気持ちです。

──それだけヒットしたあとの続編となると、第2弾はまわりからの期待やプレッシャーも大きかったのではないですか?

 そうですね。なかったとは言いませんけど、でも基本的に私が、売れたからといって第2弾をもっと売れるように狙っていくことはしたくなかったんですよ。

 そもそも続編は1冊目より売れないものだと編集さんからも聞いていましたし、第1弾を意識しすぎて、読者に「あれ? なんか前と違う」と思われるのも悲しいじゃないですか。代わり映えしないところが実は「家のごはん」のいいところであり、愛すべきところだと私は思っているので、「大ヒット本の第2弾をつくるんだ」というような気負いや変化球狙いは、まったくありませんでした。だから表紙デザインも中身も、すごく1冊目と似ているんです。パッと見て間違える人もいるんじゃないかな? と思うんですが、それでいいんです(笑)。

それをふまえてつくるあなたが一番偉い

──そもそも和田さんは、出版にもあまり前向きではなかったんですよね?

 そうなんですよ。単純に日々の備忘録として、証拠写真的なつもりで毎日食卓の写真をインスタのストーリーズにあげていたんですけど、それを見てくれた出版社の方から「すごくリアルな料理だと思うので、本にしてみませんか」とお声かけいただいて、出版が決まったんです。

 私としてはただの記録だったし、「わざわざ本にするようなおかずじゃないだろう」という気持ちもあったので、書籍化にはかなり迷いもあったんですけど、せっかくご縁をいただいたのだから頑張ってみようと出版させていただきました。

 第1弾は、料理もテーブルコーディネートも全部自分でやったんですけど、めっちゃ大変だったので、今回はスタイリストさんにもご協力いただきました。プロに入っていただくと、地味なお料理でもとてもすてきな食卓になるんですよね。格段にグレードアップしました。

 本には、編集やカメラマン、スタイリスト、校正など、いろんなプロが集まるものづくりの醍醐味がありますね。自分の言葉を自分で発信するしかないSNSと違って、いろんな人のいいものをつくろうという思いが結集されているので、ひとりで黙々とインスタ投稿していた時とはまったく違う達成感が得られたのはありがたかったな、とあらためて感謝しています。

──世の中に数多くのレシピ本があるなかで、和田さんのご著書がこれだけ多くの方に読まれているのはなぜだと思われますか?

 いちばんは、みなさんが作っているようなもので親近感があるからじゃないでしょうか。私は「料理家」としてお仕事をさせていただいていますが、いまだにそんな難しいことはできないし、無理して作っていません。一応プロとして「最低限はこうするとおいしいよ」という情報はお伝えしていますが、別にその通りにしなくてもいいですし、つくる人の「もっとこうしたい」という気持ちが一番大事だと思うんですよ。

 だって料理って、レシピを提案する私じゃなくて、それをふまえてつくるあなたが一番偉いわけじゃないですか。なんてことない料理なので、あとはお好きにアレンジしてください、みたいなところが、みなさんに受け入れられているゆえんかな、と思うことはあります。

──料理初心者からすると「レシピを教えてくれる人が上」というイメージがありましたが、「レシピを提案する私じゃなくて、それをふまえてつくるあなたが一番偉い」という考え方は、とても新鮮です。

 そうですか? でもこれは、私がまったく料理ができなかったからこそ感じることなのかもしれませんね。「結婚するまで、キャベツとレタスが同じ野菜だと思っていた」というエピソードは、もはや私のキャッチフレーズみたいになっていますが、私が仕事として料理ができるようになったからといって、すべての人に「料理ができるようになるといいよ!」と勧めようとはいまでも思っていません。

2023.03.03(金)
文=相澤洋美
写真=鈴木七絵