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料理ができれば人生変わる、は幻想

──和田さんのレシピは、「こうやればできるよ」「これをやったほうがいい」という押しつけがないので、料理初心者でも抵抗が少ない気がします。

 「料理ができるようになってよかった」というのは、あくまでも私個人の感想で、世の中にはそう思わない人だっているはずです。料理ができるようになると人生変わるなんて、幻想ですよ。私はたまたま料理家ですけど、でも、誰かが毎日食事の支度をしてくれるならそんなに楽なことはないよねって今でも思います。

 だから、どんなに料理が好きな人にだってやりたくない日はやらない日があってもいいと思う。

 結局、料理が好きかどうかというのは、「運動が好き」と同じレベルの話なんじゃないかと私は思うんですよ。「私運動できないんです」って言うと「そうなんですね」ってなるのに、「料理できないんです」って言うと、「がんばりなさい」って言われるのっておかしくないですか? 料理も運動も、それを好きな人もいれば嫌いな人もいる。それってあたりまえだと思うんですよね。

──それでも和田さんがお料理をつくり続けるのはどうしてですか?

 代わり映えしないおかずだからこそ、つくっている時間とかそれを食べることで、日々いろいろ考えることがあったり、自分を取り戻せたりするんです。私にとっては、たまたまその方法が「料理」というだけ。だから、運動やほかの趣味、仕事でそれができる人は、別に料理じゃなくてもいいんだと思います。

 それでも「料理って、やらなきゃいけないことではなくて自分を取り戻す行為という側面もあるんだよ」ということは料理家として発信していくんだろうなと思いますけど……。

2023.03.03(金)
文=相澤洋美
写真=鈴木七絵