贈りものとして人気があるのは、やっぱり焼き菓子

 贈りものとして人気があるのは、やはり焼き菓子ですね。なかでも「プティ・フール・セック」が一番。僕自身も、ガトー・ピレネーと並んで人に贈ることが一番多いです。ちなみにプティ・フールは、セック(クッキー類)、サレ(塩味のパイ)、ドゥミ・セック(半生菓子)、フリアンディーズ(生菓子)と4種類の詰め合わせを用意しています。もともとは宴会やレストランでデザート後の小菓子として提供されてきたものですが、ひと口サイズでいろいろな味が楽しめて華やかさがあるので、贈りものとしても多くの方に喜んでいただけるかと思います。

 焼き菓子のおいしそうな感じは、僕は焼き色に出ると思っています。つまりは、窯(オーブン)の仕事が一番大事。焼くことで糖が上に浮いてきて、それがきれいに色づいて、焼きすぎれば炭になって黒くなっていく。その微妙な見極めが焼き菓子の表情やおいしさを決めるわけで、クリームや果物で飾る生菓子のようにはごまかしが利きません。オーブンの中で焼き上がっていくお菓子の状態を想像し、五感を使って焼け具合を把握し、想いを込めて焼き上げる。「おいしくつくろう」という気持ちは、必ず味に出ます。

 そうして心を込めてつくったお菓子が贈りものとして選ばれ、贈る方から贈られる方へ想いを届ける媒体となっていることは、嬉しいですね。贈りものというのは5千円、1万円というように高額のものばかりが素晴らしいわけではありません。

 たとえ100円でも、どうしてもその人にそれを贈りたいという気持ちがあれば、相手に十分に伝わりますし、最高の贈りものになると思います。うちのお店でも、「私はこのお菓子が大好きだから、あの人にあげたい」と、小さなお菓子を贈りものに選ばれるお客様が少なくありません。その味がまた、みなさんの想い出の味になって親から子へ、子から孫へと受け継がれていく。100年先もきっと変わらないおいしさを、これからもつくり続けていきたいと思います。

》【最強の贈りもの】オーボンビュータンの焼き菓子、全部見せます!

AU BON VIEUX TEMP

所在地 東京都世田谷区等々力2-1
電話番号 03-3703-8428
営業時間 10:00~17:00
定休日 火・水曜
https://aubonvieuxtemps.jp/
※日によってラインナップが変わることがあります。

2023.02.04(土)
Text=Rieko Seto
Photographs=Masahiro Goda

CREA 2023年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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