1981年、尾山台に登場したオーボンヴュータン。洋菓子好きに愛され続ける店には、伝統菓子あり、郷土菓子あり。100年先まできっと変わらない、そのおいしさはいつだって最強の贈りもの。
いぶし銀のような深い輝きを放つ、オーボンヴュータンの焼き菓子の数々。なかには、100年以上前からフランスで愛される伝統菓子もあります。そのおいしさを、100年先まで。河田勝彦シェフは今日も厨房に立ち続けます。
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変えない、変わらない。フランス菓子を贈る気持ち
「フランスで学んできたことを、思い切り表現しよう!」と想いを抱いて、東京・尾山台に「オーボンヴュータン」を開いてから、早くも40年以上が経ちました。初めは全然売れなくてね(笑)。日本的な洋菓子が全盛の時代でしたから、僕がつくる、プラリネを使ったり、パート・ダマンド(マジパン)を使ったお菓子なんて、みんな知らないし、手に取ってもらえない。「ショートケーキはないんですか?」ってよく聞かれたものですよ。「お酒がきつい」、「味がくどい」ともよく言われました。
それでも同じお菓子をつくり続けて、そのうちに店の存在をみなさんに知ってもらえて買っていただけるようになって。2015年の移転を機に息子たちふたりと一緒に店をやるようになってからも、僕のお菓子づくりは開店当初から何も変わってはいません。
なぜかと聞かれても、ただ変わらないだけ。僕のベースがどうしても、フランスで8年(1967~75年)過ごしたなかで、見て、味わって、感じたものになりますし、そこから離れられないままずっと続いているわけで。
言ってしまったら、アホなんですよ。フランスであれだけフランスが好きになって、お菓子はもちろん文化や社会に没頭して、それを日本に帰ったらがらりと変えるなんて器用なこと、僕にはできない。第一、僕はフランスで学んだことしか知らないし、それしかできませんから、自分がうまいと思ったものを信じて、一生懸命つくり続けるだけ。職人ってそういうものなんだと思います。
フランスではたくさんお菓子を食べて、「なんてうまいんだ!」って感動しました。そのおいしさやワクワク感は今でも忘れられませんし、うちのお店に来るお客さんたちにもそれを感じてほしい。
生菓子から焼き菓子、糖菓、チョコレート、アイスクリーム、フランス各地の郷土菓子、惣菜まで幅広くそろえて、お客さんたちにはそれを見渡して「うわぁ!」と歓声を上げてしまうくらい、ウキウキ、楽しい気持ちになってほしい。店名の「オーボンヴュータン」は、フランス語で「想い出の時」という意味なんです。
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2023.02.04(土)
Text=Rieko Seto
Photographs=Masahiro Goda