明治天皇の行幸に由来する“御幸の浜”

 御幸の浜は、住宅街を抜け、高速道路の西湘バイパスの下を通ってアプローチします。そしてトンネルを抜けると、目の前に大海原!

 御幸の浜は明治6年夏、明治天皇と皇后が箱根宮ノ下に避暑に訪れた際、この浜に立ち寄り、漁師による地引網をご覧になられました。この行幸を記念して“御幸の浜”と呼ばれるように。

 かつては船方(ふなかた)村と呼ばれ、漁師や篭屋で活気に溢れ、1日に1万本を超えるブリが水揚げされていたとか。

 今は数人の釣り師が岩場や桟橋で釣り糸を垂らし、犬の散歩に地元の人が訪れるのどかな浜。沖に見える伊豆大島や伊豆半島、三浦・房総半島が眺めに変化を付けています。

 海の帰りに、小田原駅近くに昨年夏オープンしたイノベーティブ料理の「TASU+ ODAWARA」へ。小田原のファインダイニング「MECIMO」の姉妹店で、こちらはカジュアルダイニング。ランチは野菜を中心に、ディナーは炭火焼きのメニューを供します。

 東京のミシュラン常連店で経験を積んだ古谷公二シェフが、ここのオープンにともない小田原に移住。“とれてからのスピード”を意識して食材にアプローチし、東京ではできないこと、ここに来る意味を出せれば、とシェフ。食材を仕入れるにも、仕入先を厳選。たとえば野菜なら日中のエネルギーを行き渡らせて、夜に届けるなど、生産者の思い入れもたっぷり。ひと皿に小田原の作り手の気持ちがこもっています。

 当初は真鶴に行くつもりが、寄り道に次ぐ寄り道で予定変更となった小田原。次回は温泉も……と、まだまだ魅力たっぷり、日帰り旅におすすめしたい近場スポットです。

御幸の浜

●アクセス 小田原駅から徒歩約20分で御幸の浜へ

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2023.01.14(土)
文・撮影=古関千恵子