#204 Saru-shima
猿島(神奈川県)

 東京湾に浮かぶ唯一の無人島、猿島。南北450メートル×東西200メートル、周囲約1.6キロメートルのサイズで、神奈川県・横須賀の沖に位置しています。横須賀中央駅からは徒歩+船で約30分と、気軽に行ける無人島です。

 猿島の地質は凝灰礫岩(タフ)。これは300~200万年前の火山活動による噴出物が堆積した地層で、数万年前に海面から顔を出し、猿島が誕生しました。

 8,000年前の縄文時代、猿島は本土と陸続きでしたので、人が行き来していたのではないか、と考えられています。

 それから月日はだいぶ流れて鎌倉時代の1253年。鎌倉へ向かう日蓮上人の前に白い猿が現れました。縁起がいい白い猿に導かれるままにやってきたのが、この島でした。

 その後、日蓮上人が対岸の浜へ渡ると、浜辺で出迎えたのは、足から血を流した石渡左衛門尉。そのことを日蓮上人から問われると、「サザエのツノで足を切りました」と。それを聞いた日蓮上人が祈ると、このあたりのサザエはツノがなくなってしまったそうです。

 猿島にはかつて春日社があり、信仰の島でした。人々は猿島へ船で参拝に訪れたそうです。

 ただしその際、島にあるものは小枝一本、持っていってはいけないとされていました。これは1884年(明治17年)に本土の京浜急行本線堀之内駅に春日神社が移されるまで続いたそうです。

 それから、日本は戦争の時代に突入し、猿島の役割も変わっていきました。当時の近代軍事施設が保存状態よく残されていることから、2015年「史跡」に指定。探検ツアー(30分間、600円)では、その頃の歴史遺産をめぐります。

2020.09.12(土)
文・撮影=古関千恵子