レンガ造りの趣深い 歴史遺産をめぐる

 今回、ガイドをしてくれたのは竹崎正一さん。探検ツアーはSarushima Welcome Centerに集合し、その前にある発電所からスタートします。

 明治26~28年に建造され、いまだ現役で使われている総レンガ造りの発電所。当時、猿島は大砲が設置された要塞でした。そのため、夜中に敵軍が東京湾に入ってこないか監視するサーチライトの電源が必要だったのです。

 敵軍の目につかないように、煙突の高さは低めの約10メートル。ちなみに、今でも電気は島内で自給しているそうです。

 両側に壁がそびえる切通しは、右と左で施工された時期が異なり、レンガの積み方も異なります。

 進行方向の右側は明治17年に造られた、レンガの縦横を交互に置いたフランス積み。これは、富岡製糸工場など日本では数カ所が現存するのみ。

 明治32年に作られた左側は一列ずつレンガの縦、横を揃えたイギリス積み。フランス積みとイギリス積み、両方が見られるのは珍しいことだそうです。

 島内には現在トンネルが3カ所あります。これらのトンネル、レンガで造られたものとしては日本最古級のものだそう。

 1つ目のトンネルは全長90メートルもあり、暗がりの中を歩くうちにカップルが身を寄せ合うことから、“愛のトンネル”と呼ばれているのだとか。

 2つ目のトンネルには、弾丸を砲台へ運ぶための釣瓶井戸のような揚弾井が築かれていました。滑車を使って、重量のある弾丸を高さ7メートルまで引き上げたそうです。

 もうひとつのトンネルは開口部上部に気根が垂れさがり、鬱蒼とした雰囲気が『天空の城ラピュタ』のようだと、SNSでウワサのスポットです。

2020.09.12(土)
文・撮影=古関千恵子