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新たな萌えを見つける楽しみ

一穂 BLを描くとき「BLだからこうしよう」と考えますか?

志村 基本ないのですが、強いて言えば、「受け・攻め、間違えたらどうしよう」でしょうか。『起きて最初にすることは』は読み切りを依頼されるごとに描いていったのもあって、受け・攻めが作中はっきりしていないんです。

 続きを描くとなったら覚悟を決めるんですけど、読者さんがすでに思い浮かべているものと違っていたら、とんでもないことが起きてしまうんじゃないか……。他のジャンルにはない緊張があります。

一穂 正解は作者が決めていい、と思ってはいるけれど、決めておいてほしいのはあるかも。心構えがしたい(笑)。

志村 三度の飯よりBL好きな友人と一緒に即売会に行ったら、彼女は議員×秘書のBLを手に取ったんだけど、「秘書が攻めじゃないのはダメ」と買わなかったんです。私は、読まないと良さはわからないと思っちゃう派なのですが。

一穂 属性の好みをトッピングのように乗せていって、そのオーダーにバチッとハマる作品に出合えると嬉しいのはありますよ。

 BLって本当にバラエティに富んでいて、年下が絶対攻めとか、黒髪は受けがいいとか、すごく細かい好みを受け止めてくれる。

 その上で、表紙や序盤からは受け・攻めがわからない作品を読んで、いざ行為に至ったときに「そっちか!」と驚くのも、私は楽しいです。新しい属性への萌えが足されることも。

志村 新しい扉が開くんですね。

一穂 そこで扉を開いてくれるのが、それぞれのマンガ家さんの作家性なんだなと思います。

―― 一穂さんは作家として、BL小説だからこその執筆の楽しみはありますか?

一穂 「フラグ」が立つ瞬間ですね。ふたりがお互いに今ときめいているな、という細かいエピソードを重ねていって、それが最高潮に達した瞬間です。

志村 ありますね。BLに限らず、ふたりの関係が変わっていくぞと思うと「ネームが動き始めた」って感じて、楽しくなる。

一穂 お見合いをセッティングしていて、「あとはふたりだけにしても大丈夫かな」と一歩引く感じです。

2022.11.12(土)
Text=Hirarisa

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