「どんなこともバレエの表現につながっていく」

――普段バレエのレッスン以外の時間は何をされていますか?

 普段のオフの時間は、映画をみたり、本を読んだり、猫と遊んだりしています。友人と会うことや、カラオケでストレス発散することも。バレエに関することはスタジオでするので、家や旅行先では一切せず、極端なくらい切り替えます。

 でもそのオフの時に体験したことも、バレエに活かされていると思っています。私の中にはバレエという絶対的な軸があり、それ以外に興味のあることでも結局すべてがバレエの表現につながっています。

 あとは絵を描くことも好きです。絵を描いている時は何も考えていない「無」の状態。瞑想状態になっているのだと思います。だから、気持ちをリフレッシュしたくなったときは、自然と絵を描いています。

――前編の旅行のお話の際にも出ましたが、ものすごく読書家というイメージもあります。

 本を読む習慣は小学生時代から。すごくお世話になった方に『純文学が面白いよ』と教えていただいて読み始めたのが川端康成さん。ご本人がバレエ好きだったというのにも共感します。安部公房さんも好きです。純文学に限らずなんでも読みます。村田 沙耶香さんの著書『コンビニ人間』は10回くらい読みましたし、最近は永井みみさんの著書『ミシンと金魚』が面白かったです。

 本を読んでいるときは、主人公の表情や仕草などを自然とイメージしています。自分の役に当てはめるわけではないのですが、アイディアのひとつとして。物語を自分の中で想像することは、舞台上での表現にもすごくプラスに作用していると思います。

 バレエは言葉ではなく体だけで表現するもの。踊り手が伝えようとしないと伝わらないので、多くの人に届く表現を探している私にとって、人の心情に対する想像力というのは、読書をすることでも育まれていると思います。

――ところで、オン・オフの切り替えのスイッチはどう入れ替えされているのでしょう?

 レッスンや舞台に向かうときは、家を出た瞬間にバレエモードに、レッスンが終わって家に帰った瞬間にオフになります。

 こんな風にオン・オフの切り替えができるようになったのは5、6年前から。スイスのチューリッヒ・バレエ団時代に味わったスランプがきっかけです。周りからの評価と自分の実力のギャップにやられてしまい、それまで味わったことのない挫折を経験しました。24時間365日バレエのことだけを考えていて「自分の存在価値ってなんだろう……」と。

 そんな状態で四六時中バレエのことをずっと考えているうちに、すごく暗くなってしまって。あまりに辛くて、家で何も考えずにダラ〜ンとしてしまったことがありました。でも悩んでいることが取るに足らないことに思えてきて(笑)、「家でバレエのことを考えるのは止めて、スタジオでは自分のできることを一生懸命にやっていこう」と考え方を変えました。本当にそこから肩の力が抜けて、いろんなことがスムーズに進んでいくようになりました。がむしゃらになりすぎず、深刻になりすぎず……自分ができることを一生懸命に、という気持ちで今もバレエに向き合っています。

人間としての思いやり「愛」を大事にしていきたい

――コロナ禍を体験して感じたことや新たに決意したことはありますか? 

 コロナ禍により、辛いことやスムーズにいかないことが世界中でたくさんありました。そんな中で私にとって一つよかったなと思えた点は、人とのつながりの大切さをより実感できたことです。会えなくなって気づいたこともありますし、出会えた時の喜びもあります。……あの、言語化してしまうとすごく恥ずかしいのですが、いいですか?

――ぜひお願いします!(笑)

 結局人への「愛」が一番大事だなと再確認しました。たとえば旅先で知らない人と出会っても、その人に対して思いやりや愛を持って接していれば、心を開いてくれる。すべては愛があってこそだなと。

 日本を旅していて目にした伝統工芸を作る方にしても、使う人への愛とか真心があって、それに気づけた時に、すごくあたたかな気持ちになれました。人、もの、もちろん自分に対しても一番大切なのが愛だと思います。人の思いやりやあたたかさに気づける人間でいたいし、自分も人に対してそうありたいと思います。

飯島望未(いいじま・のぞみ)

大阪府出身。6歳からバレエをはじめる。2008年に当時最年少となる16歳でヒューストン・バレエ団に入団。2019年には同団のプリンシパルに昇格。2021年に帰国し、K-BALLET COMPANYにて主演を務め、2022年3月からプリンシパルに。2022年12月14日~『くるみ割り人形』に出演予定。

熊川哲也 Kバレエ カンパニー Winter Tour 2022『くるみ割り人形』

飯島さんがマリー姫役で出演する、Daiwa House PRESENTS熊川哲也 Kバレエ カンパニー Winter Tour 2022『くるみ割り人形』が2022年12/14(水)~18(日)に公開。(飯島望未さん出演回は12/14(水)14:00、12/17(土)17:30)
会場 Bunkamuraオーチャードホール(渋谷)
https://www.k-ballet.co.jp

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電話番号 072-994-5522
https://www.rimowa.com/

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2022.11.15(火)
文=天野真由美
写真=河野翔大
スタイリング=渡邊薫
ヘア&メイク=RYUJI