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 美輪明宏に見初められた舞台「黒蜥蜴」での俳優デビューから10年。これまであまり語られなかった海外作品の出演エピソードや今後の展望まで。間違いなく今の日本映画界を面白くしている俳優の一人、中島 歩の目指すところとは。

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●海外の大作にも連続出演

――2019年、「第76回ヴェネツィア国際映画祭」にも出品されたロウ・イエ監督の中国=ドイツ=日本合作『サタデー・フィクション』に出演。日本では未公開の作品ですが、オダギリジョーさん演じる暗号通信の専門家の護衛役を演じました。

 あのときも、全然芝居ができないけれど、コン・リーさんら世界的スターたちが集まった大作なので、思い切ってやるしかないという気持ちでしたね。まるで雲をつかむような気分でした。でも、オダギリさんという素敵な先輩が近くにいて、本当に助かりましたね。特に芝居についてお話しするようなことはなかったですが、心強かったです。

――21年には香港=中国=日本合作の『梅艷芳ANITA』(日本ではディレクターズカット版が配信)にも出演。伝説の歌姫アニタ・ムイが恋に落ちた日本人アーティスト・後藤夕輝役を演じましたが、実在する国民的アイドルをモデルにした役柄を演じることはいかがでしたか?

 先に『サタデー・フィクション』の現場を踏んでいたことがオーディションで役立ったような気がしますが、演じるうえではまったく意識はしませんでした。どこかで恥ずかしい気持ちはありましたけれど、リョン・ロクマン監督からは内面的な演出をされるというよりは、角度や映り方を細かく指摘されましたね。光が眩しい土手にいても、「絶対に眩しい顔をするな!」といったような感じでした。あと、アニタ役のルイーズ・ウォンさんは香港の方で、演技未経験なこともあり、そういった方を相手に、日本語でお芝居するのは、なかなか難しかったです。

2022.09.23(金)
文=くれい響
写真=平松市聖