俳優のみならず映画監督としても活躍する斎藤 工さんにとってマンガは創作の糧だという。今の時代だからこそ求める作品とは。


一人称の視点に終始しない多角的な作品に惹かれる

 「自分のベースには映画以上にマンガがある」。生粋のシネフィルである斎藤 工さんからこの言葉を聞いたとき、その熱を垣間見た。

「日本はマンガ大国であるがゆえに実写化作品も多く、国内の役者は他国に比べてマンガと密接に結びついている。僕自身、出演作の原作を読みにマンガ喫茶に行くこともよくありました。幼少期のように純然たる娯楽として楽しめない一方で、それを超越した作品に出合える瞬間がある。そうした研磨された出合いを経験できるのは、業界にいるからとも感じます」

 仕事を超えて、心震える作品に巡り合う喜び。近年では『チ。―地球の運動について―』や『葬送のフリーレン』に衝撃を受けた。

「両作品とも、主人公の目線で物語が展開していく文法が、次のフェーズに入っている。主人公が交代する建て付けや長いスパンの時代を描く物語設定もそうですが、いち人物の主観で捉えずに多角的に人間を描いていますよね。例えば『セミは7日間しか地上で生きられない』というけど、当人には『短い』という感覚はないかもしれない。そういった目線に、ついに娯楽芸術が追い付いてきた。ここまで来たか! と感じました」

2022.09.12(月)
Text=SYO
Photographs=Erina Fujiwara
Styling=Shinichi Mita(KiKi inc.)
Hair & Make-up=Aki Kudo

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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