一つの作品を時間をかけて作れるのが嬉しい
――『TOKYO VICE』で山下さんが演じるアキラは4話から登場する、ちょっと謎めいたホストといったキャラクターですね。
そうですね。今までやらせていただいた役は、どちらかと言うと正義のほうが強かったんですが、アキラは真逆です。人間の汚さだったり、どこか欠落しているような、醜い部分みたいなものが大きく出ている役なんです。どうやって作品の中のいいスパイスになれるか、どういう風に記憶に残ることができるかを、監督と一緒にひねって自分なりに味つけして、現場の皆さんの足を引っ張らないように頑張っていました。
そういう意味でも、自分の中ではチャレンジングな役でした。今までやったことがないから「やりたい」という思いがありましたし、俳優というキャリアの面で考えると、本当にすごくいい経験をさせてもらえました。
――「自分なりに味つけ」とは、山下さんが具体的に足した部分があったということですか?
はい。『TOKYO VICE』は90年代の話なんです。90年代と言えば、当時流行っていたアクセサリーを先輩からいただいたことがあったんですね。なので自分から「このアクセサリーは、90年代に日本ですごく流行ってたものだからつけていい?」と聞いて、OKだったのでアキラをやっているときはずっとつけていました。
あとは、今回ありがたいことに考える時間、監督と話し合う時間、ホストに通う時間など、時間がたくさんありました。これまで、僕は「時間がない中でどれだけやれるか」という撮影の経験が多かったので、ベクトルが全然違うなあと思ってやっていました。時間がない中の撮影は、それはそれで結束力が強くなったりするんです。
けど、今回はゆっくり関係性を作っていくことができたから、どちらの経験もできて自分は幸せだなと思いながらやっていました。
――これまでは時間がない中での撮影が多かったんですね。
もちろん時間がある作品もあるとは思うんですけど、たまたま僕がやってきた作品が、本当に時間がなくて。「1~2カ月、地方に行って撮影していました」とかも聞いたことがあるんですけど、僕、全部東京で撮影していたから実は1回も行ったことがないんです(笑)。
今度はじっくり時間をかけて作る日本の作品にもチャレンジしたいですし、『TOKYO VICE』を通して、新しい取り組みをしたいなと思いましたね。すべてのことをあらゆる角度で体験してみたいという興味が出ています。
2022.08.15(月)
文=赤山恭子
写真=佐藤 亘
スタイリスト=宇佐美陽平(BE NATURAL)
ヘアメイク=北一騎