日本が世界に誇る発酵文化を極めて
◆徳山鮓(とくやまずし)
![玄関には涼しげな暖簾。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/6/-/img_1603ce2fc816cdb34781078f6a863509124733.jpg)
余呉湖の畔にある和風オーベルジュ「徳山鮓」を訪れずして、滋賀の食を語ることなかれ。
余呉湖は賤ヶ岳を挟んで琵琶湖の北端に隣接する周囲約6.5キロの湖だ。
![山に囲まれた余呉湖の清らかな風景を眺めながら、テラスで食事もいい。どの季節も美しい。そして美味しい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/c/-/img_7c20c80eaf61922a8c48796611ae181b172961.jpg)
緑深い山々に囲まれ、湖とせめぎ合うような狭い平地に畑や民家が連なる。この盆地のような地形が、この上なく豊かな恵みを生み出す。
![頭から一気に食べたい鮎の塩焼き。コシアブラのペースト添え。鮎は外の焼き台でひたすら焼く。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/5/-/img_a57b96fe8624e4417b782a95a74002cb215950.jpg)
その自然からの贈り物の大事を誰よりもよく知るのが、主人・徳山浩明さんだ。
![余呉湖の天然鰻。皮目はパリッと、中はふっくら。上にのせた生の実山椒のなんとジューシーなことか。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/e/-/img_de40378389901bcbe73c365da9355438295945.jpg)
山の奥深くまで分け入り、湖に仕掛けを施し、獲物をさばき、養蜂し、また最近は、野菜栽培まで手がけている。
![“発酵からすみ”。まるで平貝のような大きさに驚く。初めての食感、初めての味。日本酒が進んで困る。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/0/-/img_40b2b94e80354ddc13f6a15c73a8d49f159781.jpg)
徳山鮓のゴッドファーザーは発酵学の第一人者、小泉武夫さんだ。「鮓」は熟れずしの意。塩をふった魚介を飯とともに漬け込んで、自然発酵させたものだ。
![初夏のコースから、野菜の一品。焼きナス、熊の足肉、ワラビ、山ウド、新玉ネギ、シソの葉、オクラ、揚げた蓮根。猪の出汁をかけてある。いろいろな食感が口の中で弾ける。猪の出汁が味わい深く、澄み渡る。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/2/-/img_b230f6cfc17fafcbc960e136bf64648d115623.jpg)
この店のスペシャリテ、鮒ずしの「すし」も、この鮓の字がふさわしい。
![分解&再構築された鮒ずし。なんとも美しい。ジュレとともにさっぱりといただく。これぞ酒肴。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/8/-/img_88aee55a15bbe993b09693ed7911eb66234543.jpg)
鮒ずしはどうも、という方も、まずは食してみてほしい。おしゃれでイノベーティヴで、誰もが馴染める一皿に昇華されているのである。
![家族で店を守り立てる。右から、長女・舞さんの夫、那由太さん、舞さん、主人・徳山浩明さん、女将の純子さん、次男・敬介さん、長男・翔太さん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/d/-/img_4d9a383808e6ed9f5336815e1d9c3bad167533.jpg)
京都の一流割烹で修業を積んだ長女夫妻、今や父を凌駕するのではという山菜&ジビエ使いの次男、発酵の研究を続ける長男、それを指揮しつつ、日本の食の未来を見据えて研究を続ける父、もてなし担当の母という、盤石で最強の体制が、今、完成しつつある。
![冬から春先にかけてのお楽しみ、熊鍋。熊肉の美しさ、美味しさに加え、発酵出汁の深みがクセになる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/-/img_3fa175145e19fe5d11f3c72bd7054ff5154876.jpg)
初夏から夏は鮎、秋はキノコ、冬はジビエ、春は山菜と四季を追いながら、すべてに発酵を絡めながらコースが紡がれていく。軽やかな熊鍋も必食だ。
![メインダイニング。他に個室が3室。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/a/-/img_eaf853b29340fda87b7da86d621f933c101772.jpg)
徳山鮓(とくやまずし)
所在地 滋賀県長浜市余呉町川並1408
電話番号 0749-86-4045
営業時間 12:00~14:30、18:00~21:00
※予約は電話でのみ受け付け。(10:00~11:30、15:00~17:00)
客室数 6室
料金(1名) 38,500円~(2食付き、2名以上10名まで)
https://tokuyamazushi.com/
2022.08.08(月)
Text=Michiko Watanabe
Photographs=Atsushi Hashimoto、Ichisei Hiramatsu
CREA Traveller 2022 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。