素晴らしい食の伝統遺産や豊富な食材に恵まれながら、控えめな存在に思えていた滋賀。

 それが今、食いしん坊たちが心を震わせる刺激に満ちた食都へと変わっている。

 滋賀の自然豊かな地元の食材を生かした料理の数々を担当できる宿・レストランを5軒ご紹介。


京都からのアクセスも良好。季節ごとに訪ねてみたい

◆山の辺料理 比良山荘(ひらさんそう)

 琵琶湖の西側に南北に延びる比良山系。その山懐にある、比叡山延暦寺の別院、回峰行の要でもある古刹・明王院の門前にあるのが「比良山荘」だ。

 山荘という名の通り、もとは主に宿泊を提供する宿だった。先代の頃から料理に力を入れはじめ、今のような形になったと3代目主人・伊藤剛治さん。

 山懐と聞くとアクセスが悪そうだが、京都市内から車で約40分。気軽に足を運べる距離である。

 折々の味を求めて、全国から食いしん坊たちがやって来る。

 自然豊かな地の利を生かし、初夏から夏は鮎を塩焼きにして食べ尽くす「鮎食べ」が登場する。

 秋は名残の鮎と松茸のコラボに感動の「鮎松」、9月末から10月末は「焼きまったけ特別コース」が。

 11月中旬から3月までは熊鍋の「月鍋」。

 春は山菜、4月から5月前半まで熊と花山椒の鍋、6月は熊とジュンサイ鍋、というふうに年間を通じ、生命力溢れる山の幸が振る舞われる。ラインナップを聞いただけでワクワクしてくる。

 ワインの品揃えも年を追うごとに充実。今やワイン庫となった蔵には、秘蔵ワインが眠っているそう。

 ワインリストに添えられたクママークや鮎マークを参考に時季ごとのワインを選ぶもよし、ニューカマーの鮎モヒートやクマハイボールなんてカクテルを選ぶのも楽し。

 「食材のポンテシャルが高いので、素朴に直球勝負でご提供しています」と主人。明日へのエネルギーが体中に漲ってくる料理である。

山の辺料理 比良山荘(ひらさんそう)

所在地 滋賀県大津市葛川坊村町94
電話番号 077-599-2058
営業時間 11:30~13:00、17:00~19:00 (いずれも最終入店、要予約)
定休日 火曜
http://hirasansou.com/
※宿泊は休止中。

2022.08.08(月)
Text=Michiko Watanabe
Photographs=Atsushi Hashimoto、Ichisei Hiramatsu

CREA Traveller 2022 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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