伝統と新しさが融合した、手作りの布靴やガウン
丁寧に刺繍が施された布シューズや、レース生地を用いたドレスなど、東洋と西洋の要素がミックスされた、レトロさと現代的なセンスを感じるアイテム。
これらは、2020年末にヴィヴィアンさんとラファエラさんという2人の台湾人女性が立ち上げた、「ONE TWO&CO.(ワン・トゥー・アンド・コー)」というブランドの商品です。
彼女たちは通信販売をメインにしたセレクトショップを運営しており、厳選したライフスタイルグッズのほか、布シューズやドレスなどのオリジナル商品を製作販売しています。
看板商品はミュールタイプのハンドメイドシューズや、刺繍ボタンをあしらったクラシカルなメリージェーンシューズ。さらに、今春にはイタリア製のジャガード織りの生地を用いたチャイナシューズの販売も開始しました。これらは全てベテランの靴職人が手がけ、受注生産となっています。
開発のきっかけとなったのは、数年前にヴィヴィアンさんが演劇用の靴を専門に作る職人と出会ったことでした。チャイナシューズとミュールを組み合わせたスリッパをオーダーしたところ、周りから大好評だったそうです。しかし、その職人は高齢のため、大量生産ができず、商品化には至りませんでした。
かつては世界一といわれるほどの靴の生産量を誇った台湾。こうしたすばらしい職人の技をより多くの人に届けられないかと考えた2人は、靴業界の友人を通して、数少ない手作りシューズの職人を見つけることができました。
普段は子供靴を専門に作っている職人なので、履き心地を特に重視しています。靴の型の調整をしたり、クッションを入れたり、さまざまな試行錯誤を重ねた結果、「ONE TWO&CO.」初のベルベットミュールが誕生したのでした。
また、日本やイタリアの布地を用いたドレスやガウンなども人気です。こちらは台湾の南部、高雄市在住の70代のテーラーによるもの。彼女は50年以上にわたり結婚式専用のフォーマルドレスを作っていましたが、現代の暮らしに合うドレスを一緒に作ってみたいと協力してくれたのでした。
日本や欧米から生地を調達し、職人の技とアイデアを存分に発揮し、一枚一枚手作りしているドレス。今年から一部の商品はオーダーメイド可能となっています。
靴やドレスのデザインは、ヴィヴィアンさんとラファエラさんの2人が手がけています。
2人とも旅が好きで、以前はよく一緒に旅に出かけていました。そんな中で、「いつか自分たちが本当に着たいもの、履きたいものを作りたい」という夢を持つようになったそうです。
ブランド名の「ONE」とはヴィヴィアンさん、「TWO」はラファエラさん、そして「&CO.」とは彼女たちとコラボレーションする職人やデザイナー、アーティストたちを指しています。
ファストファッションが流行している現在、職人が手間と時間をかけて作るシューズやドレスは貴重な存在といえます。
ラファエラさんは、「伝統的な技術に自分たちの現代的なセンスを盛り込むことで、若い世代にも台湾の匠の技を知ってほしい。そして、若者と年配の職人を結びつけるブリッジのような存在になりたい」と語ります。
5月には台中市に予約制のショールームを設ける予定で、さらなる展開が期待されます。また、オフィシャルサイトでは、日本からの購入も可能。なお、商品は全て手作りなので製作には3週間程度要するとのことです。
2022.04.21(木)
文・撮影=片倉真理