つながりの和がもたらすもの

 蜀の軍師となる諸葛孔明は、『新・三国志』の中で人の和の大切さを説きます。そしてそれを手に入れた者はおのずと道が拓ける、と。

 その孔明を演じているのは二代目を襲名しこの作品で新たな一歩を踏み出した市川青虎さんです。青虎さんは2歳の時に『ヤマトタケル』を観て歌舞伎に憧れ、やがて猿翁さんに入門し市川弘太郎の名で数々の舞台で活躍されてきた俳優さんです。

 公演ポスター撮影の日、順番が最初だった青虎さんの撮影が始まると、スタジオ上部に設けられたバルコニー部分に猿之助さんが姿を現しました。そして諸葛孔明としてカメラの前に立つ青虎さんに声をかけます。「いいね! 頭よさそうに見えるよ」。名軍師ぶりを讃えられ、青虎さんはちょっと照れくさそう。スタジオのムードが一気に和みます。

 傍らでは衣裳さん、床山さん、小道具さんがそれぞれの仕事を全うして黙々と準備を進めています。やがて別室でしたくを整えていた中車さんと笑也さんもスタジオにやってきました。

 密にならないよう時間配分や空間を工夫しながらの撮影は、交わす言葉も最小限。それでもお互いの意思疎通はばっちりで、数々の舞台を共につくりあげてきたチームならではの結束力でものごとは手際よくスピーディーに進んでいきます。

 猿之助さんを中心に信頼の絆で結ばれた人の和に、孔明のせりふが重なります。

●猿之助さん 第一部『新・三国志』関羽役で出演中!
三月大歌舞伎

期間 2022年3月3日(木)~28日(月)
第一部 午前11時~
第二部 午後2時40分~
第三部 午後6時30分~
※休演 10日(木)、22日(火)
会場 歌舞伎座
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/745