約20年前、レイチェル役を演じたホイットニー・ヒューストンの歌と共に大ヒットした映画『ボディガード』。
歌手であり女優としても活躍する世界的スーパースター・レイチェルと、彼女の警護の任務を受けた優秀なボディガード・フランクとの運命の恋がミュージカル化され、2020年春に日本版キャストにて初上演。
映画でケビン・コスナーが演じたフランク役に、日本版オリジナルキャストとして選ばれたのが大谷亮平さんだった。
これが初舞台にして初ミュージカルへの挑戦となったが、幕が開けてすぐにコロナ禍により公演中止に。たった5回のみの幻の初演から約2年の時を経て、ミュージカル『ボディガード』の待望の再演が決定。あらためてフランク役に臨む大谷さんに、今の思いを伺いました。
「初演は5回しかできませんでしたが、自分にとってはとても濃い時間でした」
――前回が初舞台で初ミュージカルでした。わずか5回ではありましたが、舞台を経験しての手応えなどはありましたか。
初舞台ということで、結構長い稽古期間をいただいて十分準備はしたつもりでしたが、実際本番の舞台に立ってみると、また全然違いましたね。気持ちが乗って何かを加えたくなったり、稽古しながら頭で考えていたことが「こうだったんだ」って答え合わせできる瞬間があったり、お客さんの反応が返ってくることによって、ここがこんなふうに変わるんだという発見があったり。自分が思ってもいなかったこともいろいろあり、刺激の多い時間でした。
公演自体は5公演しかできませんでしたが、とても濃い時間で、「早く知りたかった」と思いましたし、とてもいい経験になりました。
――とくに印象的だったことは何ですか?
お客さまがいらっしゃるということですね。皆さまマスクもされて声も出せない状態ではありましたが、それでも一生懸命観てくださっているエネルギーがこちらにも伝わって、舞台に立つ側ももらえるものがあるんだなと。
僕たちも、お客さんに喜んでもらいたい、パワーを与えたいっていう気持ちで演じているんですが、こちらはこちらで客席からいただくパワーを利用して、作品のなかで自然に生まれてくる大きな流れにうまく乗せることができました。それが僕にとってはすごくプラスに働いたかなと思います。心地いい感じでもあり、より乗っていけたという感じでしょうか。
――具体的に、稽古場との違いをどんな瞬間に感じられましたか。
これはいいことなのか悪いことなのかわからないですが、感情を見せるシーンなどでは、より伝えたいという気持ちになりました。ラブストーリーではありますが、フランクにとってレイチェルはクライアントなわけで、仕事上のことを考えると近づいたらいけないし、感情を見せないんですよね。それでも惹かれてしまう、そういうフランクのもどかしい想いを観ている方に届けたくて、そこをより際立たせたくなってしまうというか。単純なんですよ(笑)。
2021.12.26(日)
文=望月リサ
撮影=深野未季
ヘアメイク=MIZUHO(VITAMINS)
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)