ひとつの作品に携わっている間は、その作品だけにオールインする

――フランクは、仕事に対してプライドと強い責任感を持っているとおっしゃっていましたが、大谷さんご自身が、いまの俳優という仕事に対して譲れないものとか、ここだけは守りたいものというのはありますか。

 すごくシンプルですが、作品に携わっている間はその仕事のことだけ、この先の仕事のことは考えずに臨むということでしょうか。どの現場に行っても、その作品のプロデューサーさんだったり、スタッフさんだったり、作り手の方々の強い思いを直接伺うこともあるし、実際にすごく感じたりするんですね。だからこそ、他を見ていちゃいけないなというのはあります。もちろん、自分自身の生活は大事にしていますけれど、こと仕事に関しては、その時関わっている作品にオールインするってことですかね。そして、ひとつひとつの作品を大事にしていくということぐらいですね。モットーとしているのは。

――ただ、お忙しいでしょうから、同時並行で複数の作品をやられることもありますよね。

 その時も同じです。自分のことだけを考えると迷いが出るんですけれど、たとえば2つの作品を同じ時期にやっていたとしても、片方の現場に入ってスタッフさんと顔を合わせて話せば、そっちのモードに入るし、その中で自分の役に与えられた期待に、全力で応えていこうという気持ちになるんですよね。もう一方の現場に行けば、またそっちのモードで同じように、期待に応えたいという気持ちになる。その瞬間は、そこひとつだけなんです。別に頑張ってそうやっているわけじゃなく、自然とそうなっていきました。

 まず期待に応えたいっていうのがあるんだと思います。自分にいただいた役ですから、ひとつひとつを大事にしたいんです。まだまだ自分にできないこともいっぱいありますけど、やれることはしっかりやって、できないことに対しては今ある自分の精一杯で応える。あんまり先を見ても面白くないという考え方なんですよ。それじゃやってる意味がないというか、まずは今、目の前にあるものに対して頑張る、という考え方です。

»【後篇】につづく

大谷亮平(おおたに・りょうへい)

1980年10月1日生まれ、大阪府出身。大学在学中にモデルデビュー。2003年に韓国で出演したCMが話題となりブレイクを果たし、数々のドラマや映画にも出演。2014年にはドラマ『朝鮮ガンマン』で「ソウルドラマアワード」グローバル俳優賞を受賞した。2016年より日本でも活動をスタートさせ、ドラマ『ラブソング』で日本のドラマに初出演。その年の『逃げるは恥だが役に立つ』の風見役で話題を集める。2021年大河ドラマ『青天を衝け』では、安政の改革を断行した阿部正弘役を演じた。そのほかも数々の話題作に出演。2021年11月より、放送中の情報番組『せやねん!』(毎日放送・毎週土曜 9:25~)にて、次代の日本スポーツ界を牽引していくアスリートたちに、自ら体当たりで取材をおこなう「大谷亮平の熱血!届けます」コーナーをスタートさせ、自身のバレーボール経験から、スポーツに携わる活動も増えている。

ミュージカル『ボディガード』

いまや王道中の王道ラブソングともいえる、ホイットニー・ヒューストンの歌う『I Will Always Love You』と共に、1992年に全世界で大ヒットした映画『ボディガード』。その映画で使用した楽曲をふんだんに盛り込んだミュージカル版は、2012年にイギリスで初演され、以降、オランダ、カナダ、ドイツ、アメリカなど世界各国で上演されてきた。日本では2020年に初めて日本版キャストによる新演出にて上演に。しかし当初予定されていた東京・大阪の全33回のうち、大阪で5回上演されたのみで、以降、コロナ禍により全公演が中止となった。約2年ぶりのリベンジとなる今回は、フランク役の大谷さん、レイチェル役の柚希礼音さん、新妻聖子さんという初演キャストに加え、May J.さんがレイチェル役に加わり新たに始動。歌手でありオスカーを目指す女優でもあるスーパースターの歌姫・レイチェル(柚希礼音、新妻聖子、May J.)の元に、彼女の命を狙う脅迫状が送られてくる。彼女の身を守るため雇われたのは、かつて大統領の警護も行っていたボディガードのフランク(大谷)だった。しかしいつしかふたりは互いの立場を越えて惹かれ合うようになり……。

http://bodyguardmusical.jp/

2021.12.26(日)
文=望月リサ
撮影=深野未季
ヘアメイク=MIZUHO(VITAMINS)
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)