「僕自身、舞台上でレイチェルのパフォーマンスに圧倒されています」
――今回、再演にあたっての新たな課題のようなものはありますか?
5回きりではありましたが、初演からは2年が経っていますし、新たな気持ちで臨みたいとは思っています。当時、映画の『ボディガード』をご覧になった女性の皆さまが、フランクを演じたケビン・コスナーさんに対して、「素敵だな」とか「私もあんなふうに守られたい」と思われたそうなんですね。前回を踏まえて新たに加えていかなきゃいけないところはあるでしょうが、舞台をご覧になった方に、まずは純粋にそう思っていただくのが自分の役割で、この作品における大きな目標です。わざわざチケットを買って劇場に足を運んでご覧になるわけで、暇つぶしで来られるお客さんはいらっしゃらないと思うんです。本当に作品が好きか、観たいキャストがいらっしゃるか……。そういう方々に、しっかりこの役の印象を残したいですね。
――同じ男性として、大谷さんがフランクという役に感じる魅力とはどんなところでしょうか。
仕事にすごく強い責任感とプライドを持っているところと、そういう人でありながら、ひとりの女性によって、揺れ動かされてしまう人間的なところじゃないでしょうか。仕事の相手とはプライベートな関係を持たない、と言いながらも止められない。その振り幅がとてつもなく大きくて、そこが魅力かなと思っています。
――レイチェルは世界的な歌姫で、歌の実力はもちろん、カリスマ性もすごいですけれど、一方、ワガママだし、フランクに対しては反抗的な場面もありますよね。フランクを演じられていて、大谷さんはレイチェルのどこに魅力を感じて恋に落ちたと思っていますか?
向こうもフランクと同じように、自分の仕事に対してプライドと責任感を持っていて、自分の命が危険に晒されているとわかっていても、どうしてもそれを捨て切れない。そこで苦しむ彼女の姿を見て、フランクの中でそれまで仕事だったものが、共感だったりに変わってくるんですよね。
葛藤だったり、自分の殻を破りたがっているところだったり、自分にちょっと期待している部分だったり、そういう人間的な一面が垣間見えて、そこに気持ちが持っていかれました。
そしてもうひとつが、彼女のあの歌とダンスですよね。あのパフォーマンスを間近で見たというのも、惹かれた大きな理由だと思います。これまで彼女のような人のボディガードをしたことがあるのかはわからないですが、僕自身、フランクとして舞台上で見ていてレイチェルのパフォーマンスに圧倒されているし、この女性を守りたい、守らなきゃとリアルに思わされてしまう。演じる女優さんたちは、僕を含め、客席のお客さまにもそう思わせることが、この役を演じる役割だとも思いますし。
2021.12.26(日)
文=望月リサ
撮影=深野未季
ヘアメイク=MIZUHO(VITAMINS)
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)