非道な性犯罪被害の恐怖を丹念に描き切った傑作クライムサスペンス

◆『アンビリーバブル たった1つの真実』(2019年/Netflix)

 本作はNetflixで観ることができる全8話のリミテッドドラマ。2019年に配信され、あのゴールデングローブ賞にもノミネートされるなど、高い評価を獲得しました。

 主演は日本でも口コミでヒットとなった青春コメディ映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で主演を務めた、24歳の新星ケイトリン・デヴァー。共演はホラー映画『へレディタリー/継承』で名演を見せた俳優のトニ・コレットら実力派が揃っています。

 本作は2015年にスクープされ、のちに報道などに贈られる最高の栄誉であるピュリッツァー賞を受賞することになった実話がストーリーの原案。レイプ犯罪という、思わず目を背けたくなる非道な犯罪を取り巻く問題を真正面から描いています。

 2008年に起きた18歳の少女マリーがレイプ被害を訴えたことで始まるストーリーと、2011年を舞台にした女性刑事二人組が姿の見えない連続レイプ犯を追いかけるストーリーが二軸で描かれていきます。この二つがいつ交わるのかというのも本作の醍醐味のひとつ。

 マリーサイドで描かれるのは、レイプ被害を思い出したくないという気持ちが証言を曖昧にしてしまうことから引き起こされる、「セカンドレイプ」という問題。被害の責任がさもマリーにあるかのように振る舞う地元警察の対応には、思わず叫びたくなるほどの怒りがこみ上げてくるはず。

 そして、そんなマリーら被害者たちの気持ちに寄り添いながら、非道な犯人を意地でも追いかけるトニ・コレットとメリット・ウェヴァー演じる女刑事二人組が、とにかくかっこいい。

 米国連邦機関・疾病予防管理センターの2014年9月の報告書では、アメリカにおける性犯罪被害は19.3%という多さだそうですが、驚くべきは64~96%が、屈辱的な被害の記憶を閉じ込めようと被害届けを出さないという事実。

 そんな「数少ない声を挙げた被害者」に待ち受ける過酷な現実……。考えさせられる社会派ドラマです。

『アンビリーバブル たった1つの真実』

親からの虐待被害を受け、施設で暮らしていた18歳の不良少女のマリー。彼女はある朝、男からレイプされたと訴えるが、あやふやな証言から周囲は彼女を嘘つき呼ばわりしていく。それから3年後、女刑事のカレンとグレースは、未だ正体掴めぬ連続レイプ犯の影を追っていた……。

2021.04.28(水)
文=TND幽介(A4studio)