ステイホーム中の楽しみといえばなんといってもゴロゴロしながら観る映画やドラマ。ベストセラー『おじさん図鑑』や『おじさん追跡日記』の著者なかむらるみさんに、ゆるい気持ちで楽しめるおじさん映画を教えてもらいました。
初回は「親戚のおじさん」映画3作。なかなか親族で集まれなくても、あの雰囲気が思い出される名作です。
親戚のおじさんは、おそらく多くの人にとって人生ではじめて出会うおじさん。独身、無職、変な言動で変わり者扱いされ、不真面目で大人らしくない。それゆえこどもに懐かれているという設定で描かれていることが多い印象です。おすすめの3本は、そんな世間からちょっとはずれたおじさんとこどもの関わり合いからうまれるドタバタ話です。
わたし自身は、ざっくりわけるときっとおじさん側の人間なので、変わり者扱いされる気持ちやいつまでも自由にいたい気持ちはすごくよくわかりました。逆に一般常識を押しつけてくる大人なんてよくわからないなあと、昔は思っていたのですが……。40歳になり、一児の親になった今、真面目でいたい親の気持ちもわかったりして、身の振り方について色々考えさせられる作品です。
●味わい深い「親戚のおじさん」映画(1)
『男はつらいよ ぼくの伯父さん』
寅さん(渥美清)が久しぶりに柴又に戻ると、妹のさくら(倍賞千恵子)から満男(吉岡秀隆)の悩みを聞いてやってくれと頼まれる。大学受験に失敗し、後輩の泉(後藤久美子)への恋心に悩む満男を寅さんは飲み屋に連れ出すが、すっかり酩酊してお勘定も払えず店員に付き添われ帰宅し、さくらたちに呆れられる。
満男も厳しく叱られ、泉のいる佐賀までバイクで家出してしまう。気まずくなった寅さんも九州へ旅に出て、佐賀の安宿で二人はばったり。泉のために奮闘する満男を見て、ひと肌脱ぐことに。伯父と甥の関係性にグッとくるお話。
『男はつらいよ ぼくの伯父さん』で好きなシーン
一番好きな「どじょうや」でお酒の飲み方を教えるシーン。サイダーみたいにグイッと日本酒を飲み干した満男を見て、寅次郎おじさんが、丁寧に酒の味わい方を教えます。台詞もしぐさもぴったりはまっていて説得力たっぷりの、これぞおじさん芸。ものすごくかっこいい。満男がピンときてないところも若者らしくていいです。きっと満男は20年後にこの光景をぼんやり思い出して、ああ伯父さんはこのこと言ってたんだなってわかるのだと思うと泣けてきます。
ちなみにこの後酔いつぶれて「どじょうや」の店員に家まで送ってもらい、みんなに怒られるのが、かっこいいで終わらない寅さんのかっこよさだと思います。
『第42作 男はつらいよ ぼくの伯父さん(DVD)HDリマスター』
監督:山田洋次 1989年公開
DVD 1,800円(※4Kデジタル修復版Blu-ray[2,800円]も好評発売中) 発売・販売元:松竹
◎Amazon Prime Video レンタル・購入・プラス松竹チャンネルにて配信中
https://www.amazon.co.jp/dp/B00QRLDYP4
2021.02.25(木)
文=なかむらるみ、編集部
絵=なかむらるみ