ゆっくりできる年末こそ、ドラマを一気見するのにはいい機会。のんびり家でくつろぎながら、スナック菓子やお酒片手に、ドラマ三昧はいかがでしょうか?
映画ライターの鍵和田啓介さんが、今年公開になったNetflixオリジナルドラマの中から今観るべき5作品をご紹介。
登場人物のファッションにも注目したい作品や、一大ブームを巻き起こした韓国ドラマ『梨泰院クラス』と『愛の不時着』の次に観るものを探している人におすすめの作品など、話題のドラマが揃いました。
2020年のベストドラマとの呼び声が高いドラマティックな物語
◆『クイーンズ・ギャンビット』
1950年代のアメリカで、母を亡くした少女ベスが児童養護施設でチェスに出会い、非凡すぎる才能をめきめきと開花させ、強敵たちと激戦を繰り広げる成長物語。
と聞くと、「地味そう。そもそもチェスのルールを知らないし……」と及び腰になる人もいるかもしれませんが、蓋を開けてみれば、地味どころかむしろ派手。
より正確を期すなら、すこぶる華やかなのです。それこそ地味になりそうな対局シーンは、シリーズを通して幾度となく登場しますが、長回し、高速カット、低速度撮影、分割画面などなど、あらゆる撮影技法でもってそのつど異なる表情に収まるので、まったく飽きません。
また、ベスは王者への階段を上り詰める過程で、酒やドラッグに溺れて落ちぶれてしまうのですが、このあたりはロックスターや天才芸術家の物語みたいにドラマティックです。
そして、当時の空気感を見事に再現したファッションやインテリア!
特に、ベスを児童養護施設から引き取った里親が、彼女のために用意した部屋は、チェックの壁紙に波模様のカーペット、天蓋付きの大きなベッドから調度品まですべてを濃淡さまざまなピンク色で揃えていて、息を呑むほどラブリーです。
しかも、こうした細部はただビジュアルを美しくするためだけに取り入れられているのではなく、例えば、前述の壁紙のチェックなんかはチェス盤を想起させたり、物語に有機的に作用しているのだから恐れ入ります。
2020年のベストドラマとの呼び声が高い本作ですが、微に入り細を穿って構築されたその世界観をひと目見れば、誰もが納得するに違いありません。
◎あらすじ
『クイーンズ・ギャンビット』
児童養護施設でチェスに目覚めたベスが、ドラッグやアルコールへの依存症を克服しながら、世界王者を目指す。プロデュース及び全話の脚本と監督を務めたのは、『マイノリティ・リポート』などの脚本家として知られるスコット・フランク。
2020.12.28(月)
文=鍵和田啓介