「キム・ジヨン」のチョン・ユミが演じるSFコメディー
◆『保健教師アン・ウニョン』
2020年のNetflixは韓流ドラマが何度目かのブームに沸いた年として記憶されるでしょう。
もちろん、筆頭となるのは『梨泰院クラス』と『愛の不時着』ですが、それと同じくらいに面白いのが本作。
原作小説『保健室のアン・ウニョン先生』は日本語にも訳されているので、読んだ人もいるかもしれませんが、物語はなかなかどうして奇天烈です。
幼少期から霊能力を持つ保健教師のアン・ウニョンが、同僚の漢文教師ホン・インピョのサポートを受けながら、新しく赴任した私立木蓮高校に跋扈する悪霊を退治する過程で、同校に隠された謎に迫る。
だいたいのあらましはそんな感じですから、すぐさま『ストレンジャー・シングス』的なものを想像する人もおられるでしょうが、テイストはだいぶ違います。
なんせ悪霊はゆるキャラのような造形だし、対する彼女の武器はBB弾の銃とオモチャの剣なのですから。
要するにコメディーなんですが、それだけで終わらないのが韓流ドラマの魅力なのはご存じの通り。実際、社会における女性の生きづらさを描くような挿話が、不意に紛れ込んだりするのだから侮れません。
それが意識的な描写であることは、本作の脚本、演出からプロデューサーまで、すべて女性であることからも明らかでしょう。
その意味で、日本でも話題になった韓国発のフェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』と通じる部分があるともいえますが、奇しくもその映画版で主演を務めたチョン・ユミが、本作のウニョンを演じているのは偶然なのかどうか。
それ以外にも、先が読めない展開や伏線の盛り込み方など、見どころたっぷりの作品なので、『梨泰院クラス』と『愛の不時着』の次をお探しの方には強くおすすめします。
◎あらすじ
『保健教師アン・ウニョン』
霊能力がある保健教師のアン・ウニョンが、赴任先の学校に渦巻く邪悪な霊たちを成敗していく。その過程で明かされる学校に隠された秘密とは? そして、謎の教団組織“安全な幸福(HSP)”とは? 一気見必至のSFコメディー。
2020.12.28(月)
文=鍵和田啓介