真犯人探しで聖夜の街から人が消えた?

『眠れる森』

 え、またキムタクの話? と思われるかもしれませんが、します。だってキムタクの話なんて何個あってもいいですからね。こちらは中山美穂と木村拓哉のW主演で話題を呼んだ作品です。タイトルからしてあのディズニー映画みたいなシンデレラストーリーかな? と思ったら大間違い。まさかのサスペンスなんです!

 中山美穂が演じる実那子は、15年前のクリスマスイブに起こった一家惨殺事件の生存者。事件のショックで当時の記憶はあいまいです。しかし結婚を前に、事件直後にもらった謎のラブレターを発見したことから、過去と対峙することになります。

 一方の木村拓哉演じる直季は、その事件の犯人の行方を追っている謎多き男。実那子は「15年目の今日、眠れる森で逢いましょう」と手紙に書かれていた通りに思い出の森に行くことで、直季と出会います。そこから実那子は自身の葬られた記憶を少しずつ蘇らせていき、事件の真実と真犯人が明らかになっていく、という展開です。

 このドラマのすごいところは、キムタクを含め、とにかく登場人物がみんな怖いということ。だってこの登場人物の中に、一家惨殺事件の真犯人がいるんです。脚本が本当によく出来ていて、みんな犯人じゃないかと疑いたくなります。

 SNS時代だったらめちゃくちゃ考察されていたことでしょう。クリスマスイブに起こったこの事件の犯人が分かるのは、15年後のクリスマスイブ。実は放送当時の最終回はリアルに12月24日。クリスマスイブ当日の夜、多くの人が固唾を呑んで結末を見届けました(視聴率30%超え)。

 このドラマの根底にある大きなテーマは、「自分の人生に対する責任」だと思います。どんな過酷な人生でも受け入れて耐え忍ぶこと、または過去を乗り越えていくことで人間は成長していきます。誰も他人の人生を肩代わりすることはできません。どんなに罪深い過ちも引き受け、自分の人生を生きなくてはいけない。そんなメッセージを受け取れる傑作です。

 ちなみに主題歌は竹内まりやの「カムフラージュ」。歌詞の世界観とドラマの内容が見事に合致して、ドラマに華を添えていました。注目すべきはこの歌詞と、オープニングのタイトルバック。実はそこに犯人のヒントが隠されています! ぜひとも注目してみてください!

『眠れる森 A sleeping Forest』

1998年・フジテレビ系列で放送
出演:木村拓哉 中山美穂 仲村トオル ほか

2020.12.19(土)
文=綿貫大介