水引模様の三つ折りの紙。楽しい時間の始まりを予感

 席数はコの字型カウンターのみの18席で、椅子に座ると、目の前にセッティングされた膳の上に、水引のデザインがあしらわれた三つ折りの紙が置かれています。

 実はこれ、開くと献立表が登場。特別な時間の始まりを予感させる演出に心が踊ります。

 食事は、料理7品にデザート1品のおまかせコース(9,800円)のみ。献立表に記されたメニュー名は「ピジョン えび」や「フラン 水牛モッツァレラ」のようにちょっぴり謎めいています。

 キーワードのような名称を頼りに料理の姿や内容をあれこれ想像してみるのも、この店の楽しみ方のひとつかもしれません。

目前でのプレゼンテーションで期待は最高潮に!

 料理の多くは、客の目の前で仕上げをしてから提供されます。このひと手間はいわば映画の予告編のようなもの。

 見ているうちに料理への期待が自ずと高まります! 盛り付けているのは「ブーダンノワール りんご」ですが、果たしてどんな料理なのでしょう!?

シェフふたりのアイデアが皿の上で見事に融合

 ネタバレになってしまいますが、こちらが「ブーダンノワール りんご」です。ブーダンノワールとは豚の血を使ったソーセージのことですが、この店ではそれを揚げ物に。

 川手シェフは以前からブーダンノワールを揚げたらおいしいのでは? と思っていたそうで、温めていたアイデアを今回実現しました。

 フレンチでは付け合わせにソテーしたりんごを添えることが一般的ですが、これはりんごのガリを合わせています。

 さらにマスタードの代わりに和からしを使用。ガリと和からしは長谷川シェフの提案によるものです。

 ふたりの遊び心や料理への飽くなき探究心が掛け合わさった結果、まだ誰も見たことも食べたこともない串料理が完成しました。

 こうしたメニューが、デザートを含めて8品も楽しめるのがデンクシフロリなのです。

2020.10.16(金)
文・撮影=石川博也