すっぴんのハワイがそこかしこに
マノアの中でもひときわ大きな家は、歴代のハワイ大学学長さんが住むお宅。
丘の上に建つ家に車が駐車できるスロープが優雅。豪邸にしてこの開けっぴろげな感じがハワイらしくて、あ〜和む。近くの大きな木の幹は電線を縫うようにトリミングされている。
人であっても、物であっても、自然であっても、相手を思いやる「アロハの精神」が街路樹にまで行き届いているのを見て、微笑ましく、誇らしい気持ち。
いつも芝生の手入れが綺麗になされているなあと見ていたお宅では、おばあちゃんがキャミソールの両肩紐を落としてまでも、せっせと草取りに励んでいた。
「そうかやっぱり丁寧にやっているんだ! お疲れ様です!」
これまで住んでいるかたの姿を見たことのなかった近所の家では、おじさんがラナイに座ってギターを奏でていた。白いあごひげをたくわえ、本当にいい雰囲気。でも決して演奏はうまくない。
じーっと見つめてしまっていたら、シャカサインをくれた。私も思わずシャカサインを返す。その距離はソーシャルディスタンスの何倍もあったけれど、とても嬉しかった。
そんなことがあったこの日、友人が大切な人を亡くした。長い闘病生活の末だった。こんな時だから何もできないかもしれない、けれどこんな時だからこそ会いに行こうと決めた。
ロックダウンされた町の中で時間に向き合っている今、私も大切なものを見極めていけたらと、心から思う。自分が今住んでいる町の良さを噛み締めて、ハワイみたいに風通しのいい人間関係も持てたら。
ということで、観光スポットではないけれど、ふだんよりゆっくり歩いたマノア散歩で見つけたハワイの風景を、感じてくださったら嬉しいです。
こんな時じゃないと、自分がてくてく歩いただけのすっぴんのハワイを書こうなんて思わなかっただろうなと思います。
Column
工藤まやのおもてなしハワイ
ハワイに暮らすお洒落コーディネーター工藤まやさんが、“おもてなし”の気持ちを込めて、ハワイの気持ちのよい空気感たっぷりの話題をお届けします。
2020.04.18(土)
文・撮影=工藤まや