本来の姿を誰も特定できない
そのことの面白み

――この作品では顔芸など、これまで見たことのないコミカルな一面も披露されましたね。

 「この人って、毎回こういう役だよね」と思われるのが嫌なんです。役者として、得意な役もあれば、不得意な役もできるのは当然だと思いますけど、評価してもらえるように、どんな役でも常に全力を尽くしています。

 毎回違う役をやることによって、極論としては、僕だと気付いてもらえなくなると思うんですね。それぐらいの振り幅があった方がいいと思うし、そうなったら「しめしめ」という気もしますね(笑)。

――それは清水さんが役者を続けるうえでの醍醐味になっているのかもしれませんね?

 僕がいろんな顔を見せることで他人が評価してくれる僕って、役というフィルターを通した僕であって、決してプライベートの素の僕ではないじゃないですか。

 この仕事を始めた当初は、本来の僕が評価されないことに不満を感じていたんですが、作品数が増えたここ1、2年は、逆に僕の本来の姿を誰も特定できないことの面白みを感じています。

 『渇き。』の後の『ソロモン』、「anone」の後の「インベスターZ」のように、振り幅ある役を演じられたことはとても面白かったです。

2019.07.12(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘