「卵がとろり」に潜む超絶職人芸

 人生の楽しみのひとつは、半熟卵に切り目を入れて、黄身がとろ~っと出てきたときですよね、そうですよね? 日本では焼き鳥屋のつくねだったり、そぼろ丼だったり、タイ人ならガッパオの揚げ卵、おうちではご褒美的に焼きそばにのせた目玉焼きだったりと、人は黄身とろ~っを求めてさまようのだが、どうやらエミリア・ロマーニャにも仲間がいるようだ。

 その名も「Raviolone in uovo」。卵の入ったラビオローネだ。ぱっと見は目玉焼き風。白っぽくって、真ん中に黄身があって、パルミジャーノ・レッジャーノがふってある。だが、もちろんまわりは白身ではなく、パスタだ。よく見るとパスタは極薄で、黄身は透けて見えている。なんだかすごい。

こちらで使われている卵の黄身は非常に赤色が濃いので、できあがりの卵っぽさをさらにアップ。もちろん味も濃厚な卵です

 構成はというと、薄く丸いパスタを敷き、リコッタチーズとほうれん草を丸く鳥の巣のように置く。その中央に卵黄をそっと置き、さらに薄いパスタを上からかぶせ、この結構な大きさのパスタを崩れないよう、破けないよう静か~に茹でるのだそうだ。なんという繊細な技、ちょっと恐ろしい! 見たわけじゃないけど、茹でられている姿は水族館のマンタのような感じかなぁ。緻密さと同時に雄大なロマンを感じますね。

 で、ナイフを入れてみると、黄身がとろとろ~っと流れ出て、でも固体になってる部分もそこそこあって、そのバランスは私的には「かんぺき!!!」というものだった。このタイミングをパスタにはさんで茹でて捕まえるって、本当にすごいなぁ。リコッタ&ほうれん草の部分が黄身さんをそっと支え、パスタもしっかり楽しめ、充実のひとときである。

「ラビオローネ」、これもまたエミリア・ロマーニャ伝統の味。エミリア・ロマーニャの人とハイタッチしたくなるような素晴らしいパスタだった。都内でもそうそう食べられるところはないと思われるので、ぜひ渋谷へどうぞ!

ビオディナミコ
住所 東京都渋谷区神南1-13-4 フレームインボックス2F
電話番号 03-3462-6277

Column

北條芽以のLOVEレストラン

美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!

2012.10.10(水)