■「それでも、生きてゆく」

満島ひかりとの対面で手が震えた

──「それでも、生きてゆく」には瑛太さん、満島ひかりさんという、坂元さんと何度もタッグを組んでいるおふたりが出演されています。

坂元 瑛太さんが10代のときにも会ったことがあるんですけど、僕にとっての瑛太さんとの仕事は「それでも、生きてゆく」から始まっていると思っています。

──満島さんとの出会いは、その前にやったスペシャルドラマ「さよならぼくたちのようちえん」ですね。

坂元 映画『愛のむきだし』を観てから、どうしても満島さんとお仕事してみたいと思ったんです。「Mother」の打ち上げのカラオケボックスで、プロデューサーの次屋さんから「次は誰と仕事したいですか?」と聞かれて「満島さんです」と答えたら、次の「さよならぼくたちのようちえん」にキャスティングしてくれたんですよ。

 でも、あのドラマは「幼稚園児5人だけで友達に会いに行く」という子供たちメインのお話だし、「俺が思ってる満島ひかりは、この役じゃ足りないなあ」と思いながら脚本を書きました(笑)。だから、最初は脚本に無かった、足の親指のない友達の話をするセリフを足したりして。満島さんご本人は子供たちとお芝居するのが好きだから、楽しんでいただけたみたいで良かったです。

──その後、「それでも、生きてゆく」で双葉をやることになったんですね。

坂元 このドラマのキャスティングは、まず瑛太さんが決まったんです。で、加害者の妹に関しても僕ははじめから、「満島さんでやりたい」って頼んでいて。でも、満島さんは既に他のドラマが同時期に何本か決まっていて、「スケジュール的にできないです」って3回か4回ぐらい断られたんですよ。

 プロデューサーの石井(浩二)さんが事務所に来て、「ダメでした。もう無理です」って言うんですよ。僕はもう満島さんのことしか想定出来なかったから、「いや、俺は満島さんじゃないとイヤなんですよ。書けないんですよ」って(笑)。そしたら、「じゃあ坂元さん、満島さんと直接会って話してください」と言われました。

 石井さんとしては「そんなに言うなら、あなた直接断られなさい」という思いだったんじゃないかな(笑)。それで、キャスティングで役者さんと会うなんて初めてだったんですけど、満島さんの事務所に行ったんです。

 初めて満島さんに会ったら、割と淡々とした感じでね、「坂元さんがいい脚本書かない人だとは思ってないんですけど」みたいなことを言ってて、僕は内心「うわ~、ヤッバいなあ。もう絶対ダメだダメだ」なんて思ってたら事務所の方からお茶を出されて、そのお茶を持つ手が震えてしまったんですよ。「ヤバいヤバい、気持ち悪い人だと思われてしまう……」と思いながら、とにかく自分の思いを、満島さんじゃないとイヤなんだ、満島さん以外考えてないんだ、っていう話だけをして帰ったら、何故か後日「やります」というお返事をいただいたんです。

 あれはなんでだったのかな? とずっと思ってたんだけど、何年も後にテレビを見たら、「坂元さんの手が震えてるのを見てやろうって決めた」ということを満島さんがお話しになっていて、びっくりしましたね。

 満島さんは、人の何を見てるかわかんないですからね。嘘のないように、誠実に接するしかないです。全部見透かされちゃうから。

2018.11.02(金)
構成=上田智子