「東京ラブストーリー」「わたしたちの教科書」「Mother」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」「Woman」「問題のあるレストラン」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「anone」──。

 数々の脚本を手がけてきた坂元裕二さんの作品世界に迫る単行本『脚本家 坂元裕二』(ギャンビット刊)が発売されました。延べ13時間にわたったインタビューの中から、紙幅の都合で単行本に載せられなかった未公開テキストを、全4回にわたってお届けします。

» Interview 01
» Interview 03
» Interview 04


Interview 02
「あのドラマ」の
「あのシーン」ができるまで partI

 フジテレビ ヤングシナリオ大賞を受賞したデビュー作から「anone」まで。『脚本家 坂元裕二』には坂元さん自身が解説する「全ドラマ作品年表」が掲載されている。ここで紹介するのは、単行本に入りきらなかった4作品のエピソード。

■「最高の離婚」

自分の物の見方が反映されている

──「最高の離婚」の光生(瑛太)のセリフは、坂元さん自身の物の見方が反映されているそうですね。

坂元 どの役もそうですけど、僕も普段から「あ~、つらい」「いやだいやだ」「あ~、面倒くさい」って言っているし、そういうところは似てるかな(笑)、偏屈で文句が多いところなんかは光生に近いと思います。

 仕事場を中目黒に移した直後だったので、ドラマの舞台も中目黒になりました。ロケ場所を把握してると、すごく書きやすいんですよ。

 あと、光生のおばあちゃん(八千草薫)は自分のおばあちゃんのイメージで書いています。当時、祖母が亡くなったばっかりだったので、それもあって。

 光生のおばあちゃんって、プロレス好きでしょ。僕の祖母は昔、大阪府立体育館の横に住んでいて、近所にプロレスのポスターがよく貼ってあったから、おばあちゃんとプロレスというのは僕の中でつながってるんですよね。

──東日本大震災で帰宅難民として歩いているときに出会った光生と結夏(尾野真千子)は、最終回で新横浜から中目黒までの距離を歩いて帰りますね。

坂元 このドラマは撮影していて、スタッフやキャストが登場人物にかなり愛情持ってくれていたのが伝わってきたんですね。

 だから最終回の登場人物の行く末の描き方にプレッシャーがありました。最終回を想像する中で、何か特別なものが欲しいと思って、光生と結夏の「1話が始まる前のこと」を書いてみたんです。

 1話で既にこのふたりは結婚しているので、「結婚する前」とか、「新婚期間」とか、そのへんを回想として描こうっていうことをまず念頭に置いて。回想を入れるためにはどうすればいいかなと思って、ふたりを歩かせよう、と。

 それで、新横浜から中目黒まで延々と歩くなかで、過去の新しい回想──要するにドラマでは描かれたことのない回想シーンが描かれていく最終回にしました。

 自分も普段生活していて、大きな出来事より、なんてことない道を雑談しながら歩いたこととかを妙に覚えていたりする。そういうのが自分の中にあったんでしょうね。

2018.10.26(金)
構成=上田智子