吉岡里帆の名演技に拍手した

──真紀さんの夫が失踪している、というサスペンスの要素はどういう流れで生まれたんですか。

坂元 まだこの話になる前、一番最初に考えていた企画が「誘拐もの」だったんですよ。誘拐されてきた男女と、それを見張ることを命じられた男女のサスペンス・ラブコメディみたいな話だったんです。

 そのときの名残で、サスペンスっぽいもの入れたいねっていうことになり、夫の失踪話が自然と入ってきましたね。

──5話で有朱(吉岡里帆)が別荘に来て、松さん、満島さんのふたりと対峙するシーンの緊張感もすごかったですね。

坂元 1カ月前から台本があって、「何月何日に3人テーブル囲んでのシーンを撮ります」ということがわかっていたので、吉岡さんはカレンダーのその日に丸をつけて、ものすごい切迫感の中で向かっていったとプロデューサーから聞きました。

 松さん、満島さんというふたりのすごい女優を相手に手玉に取る芝居をやらなきゃいけないわけじゃないですか。「吉岡里帆が松たか子と満島ひかりと対決するまでの30日間」はすごいドキュメンタリーですよね。

 僕は、出来上がった完パケを見て拍手しました。彼女も唯一無二の素晴らしい女優さんだと思います。

──坂元さんはいつも脚本を書きながらラストを考えていくそうですが、「カルテット」のラストはいつ頃決めたんですか。

坂元 お風呂に入ってる時に、8話のラストで大倉孝二さん(刑事)が出てきて、もたいまさこさんに「あの女は誰でもない女です」っていうシーンから、最終回のみんなで歌うところまでの全部のプロットが、バッと一気に自分の中で組み上がりました。

 忘れないうちにそのままお風呂に入ったまま、プロデューサーの佐野(亜裕美)さんにLINEでプロットを打って送りました。すぐに土井さんと佐野さんが駆けつけて、近所で焼き鳥食べながら、「あなた、何言ってるんですか?」みたいな感じで事情聴取を受けました(笑)。

 最後にもう1回リゾートに行くことにしたけど、4人が住んでいる軽井沢は山だから、今度は海かなあ、熱海かなあ、って。

 椎名林檎さんの主題歌を4人が役として歌うのも、自分の中ではなんとなくできそうなイメージがあって。「最終回、4人で歌って終わるのはどうですか?」って言ったときは、みんなに「こいつ何言ってんだ?」って顔をされましたけど(笑)、このドラマだったら出来ると思ったから書いてみました。

 楽屋落ちですからね、「カルテット」じゃなかったら出来なかったことですね。

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坂元裕二(さかもと ゆうじ)

1967年大阪府出身。脚本家。主なテレビドラマ作品に、「東京ラブストーリー」「最高の離婚」「問題のあるレストラン」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「Mother」「anone」などがある。向田邦子賞、芸術選奨新人賞、同文部科学大臣賞、橋田賞を受賞。

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