高橋一生が生んだ作品の普遍性

──満島さんとは何作もお仕事されていますが、「カルテット」の満島さんについては?

坂元 いつも重荷を背負う役が多かったから、楽しい役にしたかったんです。でも、演奏家という大変な役にしてしまいましたね。

 「カルテット」がインする前に、満島さんから連絡が来ました。あの人は音も全部自分でやるところまで行こうとしてたんですよ。自分で弾けないのは嘘だと彼女は思っていて、相当な負担をかけてしまいましたね。

 だから顔合わせの日に、「いつかチェロを弾く役の映画を書いてください」って頼まれました。いつか叶えたいですね。

──「カルテット」の高橋一生さんは?

坂元 企画から放送までに4年かかったドラマなんですけど、そのあいだに高橋一生くんが人気者になっていて。彼があの状況になってなかったら、「カルテット」もちょっと違う見え方になっていたと思います。

 こんなに変なドラマなのに、時代を背負っている明らかなポップアイコンがそこにいると普遍性が生まれるんだなあ、ということをひしひしと感じましたね。もちろん、4人ともお客さんを惹きつける求心力を持った人でしたけど。一生くんが「カルテット」をポピュラーなものにしたのは間違いないですね。

──松田龍平さんについてはいかがですか。

坂元 龍平くんはほんとに素晴らしかった。彼が演じた別府さんは、4人の中で一番まともでありながら、同じだけ変なとこもあるという役。回し役もやってもらって。僕は別府さんが大好きだし、2話の菊池亜希子さんとの回は自分でも好き。

 「カルテット/別府さんスペシャル」とかやりたいんですけどね(笑)。別府さんの毎日を淡々と追い続けるだけのお話とか。龍平くんとも何度でも仕事がしたいし、次は彼が垂れ流してる色気を隠さず、存分に出すようなドラマとか書いてみたいなあと思います。

──「カルテット」の劇中で4人が弾く曲は、その都度指定されたんですか。

坂元 選曲はしましたね。演奏する曲はお話と関わるから。4人の演奏は、YouTubeで(スーパー)マリオ(ブラザーズ)を弾いてるカルテットの映像を見て、面白いと思った人たちがモデルになっています。その人たちが実際の音もやってくださいました。

──ドラマの舞台を軽井沢にしたのはなぜですか。

坂元 今は東京で撮ることがすごく難しいんですよ。結果的に場所がどこなのかよくわからないツギハギみたいになってしまうし。地方だけど田舎の話ではないから、リゾートにしたいなあっていう気持ちもありました。

 スキーをやりに冬の軽井沢にはしょっちゅう行ってるので、「軽井沢でやりたいです」ってお願いして。東京から片道3時間ぐらいかかるんですけど。土井さんの猛反対に遭いながら(笑)、何回言われてもそこは変えなかったですね。

 ほとんどの場面は別荘の中だから、室内はセットでだし、大丈夫だろうと思ってましたね。本当に大丈夫だったかどうかは知りませんけど(笑)。

2018.10.26(金)
構成=上田智子