「東京ラブストーリー」「わたしたちの教科書」「Mother」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」「Woman」「問題のあるレストラン」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「anone」──。

 数々の脚本を手がけてきた坂元裕二さんの作品世界に迫る単行本『脚本家 坂元裕二』(ギャンビット刊)が発売されました。延べ13時間にわたったインタビューの中から、紙幅の都合で単行本に載せられなかった未公開テキストを、全4回にわたってお届けします。

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Interview 04
あのモチーフが出てくる理由

『脚本家 坂元裕二』には、半生と仕事の変遷を振り返る「ヒストリー」インタビューと、どんな信念で脚本に向かっているかを紐解く「パーソナル」インタビューが収録されている。最後にお届けする未公開テキストは、名前の決め方や、坂元さんのドラマに登場するモチーフについて。

キャラクターの名前はどう決める?

──登場人物の名前はどのように決めるんですか?

坂元 脚本って書く時の形式が決まっていて、「名前『セリフ』」、「名前『セリフ』」と、まず名前を書いてからセリフを書いていくんですよ。

 脚本家が何を一番多く書いているかというと、登場人物の「名前」。常に目にするものだから、身近だし、そこから言葉が呼び起こされるわけだから、しっくりこない名前だと自分が気持ち悪いんです。

 ドラマの第1話は、決定稿までにだいたい5稿か6稿書くんですけど、名前は最後まで決まらないことが多いです。

 「名は人を表す」という占いみたいなことを信じているので、登場人物の輪郭が決まらないと名前も決まらないし、名前がうまくいかないと最後まで人物が掴めなかったりする。「こういう役なのかな?」と探りながら名前を決めていきますね。

──名前に使う漢字にもこだわりがありますか?

坂元 漢字の字面や、ひらがなにするか、カタカナにするか、バランスとかは気にしますね。一行目にフワフワした字があると気持ち悪いので、カチッと収まりのいい字を選んで名前を決めます。

 キャストやスタッフが読みやすいってことも大事ですね。似たような字面が並んでると、誰のセリフなのかいちいち意味を理解しなきゃいけなくて、スイスイ読めないんですよ。

 登場人物が4人いたら、漢字二文字の名前、一文字の名前、ひらがなの名前、カタカナの名前、って分けたりしますね。字面が記号的だったり、顔のようになってると、読みやすいんじゃないかなって。

 もちろん実際にドラマになった時は音として届くわけだから、その前提があった上でのことですけど。

2018.11.09(金)
構成=上田智子