「馬来風光美食」のルンダンはニョニャ式

馬来風光美食の「チキン・ルンダン」1,200円(税込・予約をおすすめ)。骨からすっと身がほぐれるほどやわらかく煮こまれた鶏の手羽元。ソースはココナッツの風味豊か。

 この店のチキン・ルンダンはニョニャ式です。ニョニャとは、中国からの移民と現地の女性が結婚してうまれた食文化。エレンさんのお母さんがニョニャのルンダンを得意とし、エレンさんも同じ味を15年ずっと作り続けています。

 特徴は、スパイスの豊かな風味がしみた鶏肉。そして、深いコクのなかに、華やかな味わいがあること。これは、酸味のあるタマリンドのしぼり汁を加えているためで、いくらでも食べられそうなバランスの良さ。

 また、現地のルンダンはソースがあまりないドライタイプが多いのですが、ここはグレービーソースが多め。カレーのようにご飯にソースをからめていただけるのもニョニャならではです。

ココナッツの果肉は、シャキシャキの食感に仕上げるために、できあがる直前に加えて、火入れを短くしている。

 朝仕込んで、その日のうちに売り切っておしまい。煮込み料理なので翌日に提供してもいいのでは? と聞くと「香りがおちるのでダメよ。それに、フレッシュさも大事なの」とエレンさん。

オーナーシェフのエレンさんは、「マレーシア料理をもっと多くの日本人に知らせたい」と日々研究を重ねている。年に数回は故郷に戻り、現地の人気店を食べ歩いている。

 辛さはひかえめなので、もっと辛くしたいなら、注文時に伝えてみてください。また、牛肉のルンダン1,500円(税込・要予約)もぜひ。濃厚な味わいにノックアウト間違いなし。

エレンさんのルンダンが家でも味わえる!

 さて、荻窪まで行けない……という方に朗報! 昨年12月に、馬来風光美食のチキン・ルンダンが、レトルト商品として販売開始。これがびっくりするほど再現性が高いんです。

エレンさん監修の「ルンダン」(36チャンバーズ・オブ・スパイス)。アマゾンでのネット販売のほか、ナショナル麻布などで販売。価格は600円前後(180g)。

 鶏の手羽元はほろほろにやわらかく、ココナッツの豊かな香りに、シャキシャキの果肉の食感。これ、店で食べるのと同じですね! と驚いていると「当たり前よ~。だってお店で作っているのと同じレシピだもん」と笑いながらエレンさん。

約1年の開発期間を経て完成。これがあれば、自宅でも「今夜はルンダン!」とテンションが上がる。

 この商品は、馬来風光美食の店でも買えるので、帰りにお客さんが買っていくことも多々。とくにマレーシア人はまとめ買いをするそうです。

 ルンダンは、日本ではインドネシア料理として語られることが多いのですが、マレーシアでもと~ってもメジャーな料理。きっと、おいしい料理は、国境なんて関係なくて、あっちでもこっちでも自然にファンが増えていくもの。それだけルンダンがおいしい、ということなんです。

 ルンダンを食べたことがある人もない人も、ぜひ、荻窪のひと皿を味わってみてください。

馬来風光美食(まらいふうこうびしょく)
所在地 東京都杉並区天沼2-3-7 SAKAIビルB1F
電話番号 03-5938-8633
営業時間 18:00~23:00(土・日 16:30~23:00)
定休日 月曜
アクセス 中央線荻窪駅北口から徒歩5分
http://malayhu-ko.com/

マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編、『ナシレマッ!』(Malaysia Gohan kai)を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://malaysianfood.org/

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2018.03.25(日)
文・撮影=古川 音(マレーシアごはんの会)