板の上の表現者になりたい

――その舞台は、それまで松田さんが観てきた舞台と何が違ったのでしょうか?

 これという決定的なものはないんですが、ずっと培われてきたものが一気に爆発した感じでした。大学に進学することは自分の本心とは違うとか、高校卒業後の進路をいろいろ考えていたときに、ザ・スズナリの桟敷席の最前、ど真ん中で観たんですが、自分になかった世界観を提示されたような気がしました。しかも、数十センチ前で演者さんの汗が飛び交うし、熱量にもクラクラしちゃうほどやられました。客イジリもされて、上手く対応もできなかったのですが(笑)、「僕の生きる道はこれだ!」と。そして、そのときのアンケートに「僕は役者になります」と書きました。

――それで高校卒業と同時に、上京されるんですよね。

 兵庫に戻って、すぐに親に「卒業したら役者になる」と言ったので、クラスでいちばん早く進路が決まりましたね(笑)。でも、当時はかなり尖っていたこともあって、書類審査されることが嫌いだったんです。それで、応募者全員が面接を受けられるオーディションを受け、専門学校(ワタナベエンターテイメントカレッジ)に入学し、卒業と同時に今の事務所(キャストコーポレーション)に入りました。

――これまでのお話を総合すると、やはり舞台俳優を目指していたということですよね。

 舞台役者になりたいというよりも、自分の頭の中にあるいろいろなものを板の上で表現したいという気持ちでしたね。つまり、表現者になりたいと。その気持ちが強かったので、今後も絶対に板の上から離れることはないですね。

2017.05.12(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘