バラエティ豊かな月餅を食べ比べ

月に見立てた丸い形の月餅は縁起がよく、中秋節に欠かせない存在。

 日本で中秋の名月といえば月見団子だが、中華圏では月餅が欠かせない。中秋節近くになると、友人や親戚に月餅を配るのが習慣になっている。ひとくちに月餅といっても、地域によって味はさまざま。マカオや香港など広東地方では、小豆餡や蓮の実餡、ナツメ餡が主流だ。

人気の菓子店、「鉅記餅家」の月餅はパッケージもレトロでかわいらしい。

 たくさんの人が購入するから、お菓子メーカーにとっては一大商戦でテレビCMや広告も盛ん。味は同じ広東風でもパッケージに個性を持たせようと、いろいろなものが毎年登場し、熱い戦いを繰り広げている。ハーゲンダッツのアイス月餅にゴディバのチョコレート月餅、スターバックスのケーキのような月餅も。

左:コーヒーによく合うスターバックスの月餅。今年の商品はギフトボックスがランタン型、しかもLEDライト付き。
右:マカオで人気があるのは、蓮餡の中に塩漬けアヒルの卵の黄身が入っているタイプ。初めて見たときはカルチャーショックだったけれど、思いのほかおいしい。
ホテルの月餅は箱が上品で、ギフトにもぴったり。「マンダリン オリエンタル マカオ」はカスタード入り(左)、「ウィン・マカオ」のものは伝統的な蓮餡入り(右)。

 中秋節ならではの食の楽しみは、月餅だけではない。ホテル「ウィン・マカオ」の中にあるダイニング「ウィン・レイ」では、中秋節だけのスペシャルコースを味わうことができた。その内容は、蓮や栗、タロイモなど秋の食材を活用したもの。見た目も凝っていて、まさにお祝いの日の料理といった感じで、とても上品で華やか。

えび入りのレンコン餅(左)や栗とアスパラガスとビーフのXO醤炒め(右)は、この時期だけの限定メニュー。

 料理をおいしくいただいた後に登場したのが、思わず歓声をあげてしまうようなデザート。

 ドラゴンが描かれた真っ赤なチャイニーズテイストのお皿にのっているのは、キンモクセイで風味づけしたプリンと、カスタードを巻いた甘い揚げ春巻き、そしてホテルオリジナルの月餅。ミシュラン1ツ星の特別メニューを味わいながら、やっぱり、この日はマカオにとって特別な日なのだと実感した。

スイーツが盛られたデザートはまるでアート作品のよう。

2016.10.18(火)
文・撮影=芹澤和美