世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第142回は、芹澤和美さんがマカオの秋の風物詩についてレポートします。

クリスマスのように華やかに飾られた街へ

ポルトガル風建築の世界遺産も、ランタンで美しくライトアップ。

 何度も旅しているマカオで、以前からずっと体験したいと思っていたことがある。それは、「中秋節」をマカオで過ごすということ。

 中秋節というのは、旧暦の8月15日にあたる満月の日。つまり、日本の「中秋の名月」と同じだが、マカオや香港、台湾、中国では、旧正月に次ぐ大切な伝統行事として、より盛大にお祝いする。

 旧暦は毎年変わるため、中秋節の日にちも年によって異なる。2016年の中秋節は9月15日。幸運なことに、この時期にマカオを旅するチャンスに恵まれた。

中心地のセナド広場はすっかり中秋節ムード。このイルミネーションは10月1日の祝日、国慶節まで続く。

 中秋節3日前に到着したマカオは、ポルトガル風建築にはランタンが飾られ、すでにお祭りムード一色! 世界遺産も賑やかなダウンタウンも、5ツ星ホテルのエントランスもより華やかに飾られ、まるでクリスマスが一足先に訪れたかのよう。

 庶民のお買い物ストリート、下環街を歩いてみると、おもちゃ屋さんの軒先や出店にランタンがずらり。ランタンというのは、紙製の提灯の中にロウソクや電灯を入れて照らす中国風提灯のこと。最近では、アニメのキャラクターを描いたランタンも人気だ。

下環街は、中秋節の“夜ピクニック”に備えて果物やランタンを買う人たちで大賑わい。

 この時期は、オブジェのような巨大ランタンも街のあちらこちらに登場する。定番は蓮と魚の形をしたもの。これは、蓮と魚の発音が、「年々お金に余裕が出る」という言葉とよく似ているからで、縁起を担いでいるのだそう。

左:蘇州式庭園「ロウリムイオック公園」の池の中には、蓮にお月様がのったデザインの大きなランタンが登場。
右:通りに面した小さな店では、忙しくお供え物を準備中。

 中華圏では昔から、満月は家族団らんのシンボルで、中秋節は家族で過ごす大切な日。ここマカオでも、中秋節の夜は家族揃って夕食を食べ、食後はランタンを手に公園や浜辺、広場など月がよく見える場所に行ってお月見をするのが習慣だ。

 ただし、中国本土では中秋節当日が祝日だが、マカオや香港は翌日がお休み。友だちや家族と夜遅くまでお祝いするから、次の日は学校も職場も休みなのだそう。なんて粋なはからい!

ポルトガルの面影が色濃く残るラザロ地区。ポルトガル風情と中国の伝統が美しく混ざり合う光景は、マカオならでは。

2016.10.18(火)
文・撮影=芹澤和美