「昔のマカオ」そのままのダウンタウン、十月初五日街

猛スピードで次々とラグジュアリーなホテルがオープンし、ほんの数カ月で旅の情報がアップデートされるマカオ。2006年にカジノ収益がラスベガスを抜いたというニュースも話題になったので、記憶にある人も多いはず。

今や、マカオはアジアきってのエンターテインメント都市。でも、ポルトガルから中国へ返還される1999年頃までは、今からは想像できないほど、のんびりとした素朴な街だった。そんな昔ながらの、ほんわかと温もりを感じるマカオの姿を見られるのが、ダウンタウンの十月初五日街だ。

十月初五日街にある、老若男女が知る名店といえば、「南屏雅敘」。香港でもよく見かける、カフェメニューも中華も洋食もインスタントラーメンもありという茶餐廳(チャーチャンティン)だ。
品揃えは一般的な茶餐廳と変わらないが、ここは焼きたてのパンが絶品! たとえば、沙翁は、もちっとした揚げパンで、おやつにぴったり。ハワイの「マラサダ」にそっくりなのは、同じくポルトガルをルーツにしているから。パイナップルの形をした菠蘿包や、マカオ風エッグタルトの蛋撻など、どれもおいしいのに3、4パタカ(約50円)と庶民派価格。

店内はいたって質素だが、ここは学校帰りの小学生から、新聞を広げるおじさん、おしゃべりに夢中な女子学生まで、いつも賑やか。幅広い層のマカオ人に愛されるローカル店なのだ。使い込みすぎて欠けた皿やソーサーはご愛嬌。

右:卵を何個使っているんだろう? と思うほど分厚い卵ハムサンド。

右:店内にいい香りを漂わせているのは、マカオ風エッグタルトの蛋撻。
2016.09.26(月)
文・撮影=芹澤和美