お財布を気にすることなく、落ち着いて飲めるバー
「ホテルのバーで落ち着いて飲みたい!」のご希望もあっさりクリアー……なぜならここはワイキキの外れに位置する「ワイキキ・サンドヴィラ・ホテル」内にある、こじんまりとしたプールサイドに隣接した、半分オープンと言ってもいいほど外からの風もしっかり感じ取れる、れっきとした「ホテルのテラスバー」なのです。
とは言っても正直、ホテルの外観があまりにシャビーなもので、ワイキキ中心部からも歩いていける距離とは言ってもよっぽどの通の方同伴でないとなかなか入るにも勇気がいるし、たとえホテルに足を踏み入れられたとしても、あまりに奥まった場所でポツリと営業しているので、まさかそんなところにこんなオシャレなバーがあるとは想像がしにくい。それがゆえに、まったくと言っていいほどまず観光客はおりません。
ということはもちろんお値段もリーズナブル。
つまりココこそ「ホテルのバーでお財布を気にすることなく、まったりしっぽり落ち着いて飲める」貴重なバーというわけであります。
ココは、「サンドヴィラ」で「スパ」も経営する北欧出身のダルゴ氏(奥様が超美しいと評判の日本人の方! )と、若い頃のシルベスタ・スタローンを彷彿させる、絵に描いたようなイタリア人のサルバトーレ氏の共同経営。
サルバトーレは、もともとはここよりよりワイキキに近い「ルーワーズ通り」沿いで 、今は無き当時のハワイで一番正統派イタリアンとされていた「メディテラニオ」を経営しており、いつも満員だった「パーネ&ビーノ」という大人気ワインバーも仕切っていた地元では昔からのちょっとした有名人。
それこそ、ロッキーも顔負けの「イタリアの種馬」ならぬ「ワイキキの種馬」(笑)的なモテ男でありまして、カッコイイし、優しいし、会話も面白いもんだから、おそらくブティックの仕事帰りなんであろうハワイ在住女性陣なんかは、1日の〆を彼との会話とおいしいワインで終わらせようと、毎晩わんさかお店に押し寄せておりました。
当時はまだ、ワイキキも23時ぐらいになると全ての飲食店がクローズしてしまうような時代で、気の利いた飲める場所なんてほとんど存在すらしていなかったもんだから、イタリア料理店の経営で、つまみも美味しくワインも安いこの店は、当然のごとくすぐにオシャレピープル達が日々集まるホットスポットとして大人気店となりました。
もちろんのこと、僕も便乗してほぼ毎日通っていたもんだから、いつしか僕自身もサルバトーレとはやたらと仲良くなっておりました。
しかし 、そんな人気絶頂の中、突如サルバトーレに韓国で飲食をやる話が持ち上がり、彼がハワイを離れることになったのをきっかけにあれよあれよとこの店は売却されてしまい、いつしかまったく別の店になってしまったのです。
2016.07.14(木)
文・撮影=小川カズ