赤い大地のレッドセンターへは豪華寝台列車で

乗車口では、トレインマネージャーが乗客リストをチェックしながらお出迎え。

 いよいよ豪華寝台列車のザ・ガンに乗車。ザ・ガンの全長は945メートル、40車両もあるので、自分の客車を覚えておかないと迷子になりそう。

 全線開通したのは2004年だが、150年以上前にオーストラリア大陸の砂漠越えのためにアフガニスタンから連れて来られたラクダをモチーフにしたマークを使う。そう、ザ・ガンはアフガニスタンがオージー流に短くなってついた名前なのだ。

 乗車したクラスはゴールド。プラチナの次のクラスだが、2人用のキャビンには、ゆったりとした3人掛けの座席、洋服を掛けるキャビネットに鏡、トイレとシャワーもついた洗面室がついて、実用的かつエレガント。車両の端には、自由にお茶とコーヒーを淹れられるコーナーがある。さっそくお茶を淹れて、心地よい揺れを感じながら車窓からの眺めを楽しむ優雅な時間。

左:外はまだ雨模様だが、見飽きない風景。飛行機でひとっ飛びのところをわざと一昼夜かけていくこと自体が贅沢。この時間を楽しみたい。
右:コンパクトだが機能性ばつぐんの洗面室。シャワーの湯が、トイレットペーパーホルダーにかからないように工夫されている。

 トレインマネージャーという列車の責任者が、乗客に挨拶をして回りながら、いろいろと心配りをしてくれる。乗客もクルーも、出身の国やエリアが多彩で、インターナショナルな列車だ。

左:お皿の色合いを見ただけでもお料理のレベルの高さが窺えるが、チキンをアプリコットでマリネしているところにセンスを感じる。
右:デザートは、オーストラリア産のレモンアスペンを使ったタルトにパッションフルーツのソースと、柑橘系の香りが爽やか。

 お昼時になると、美しい内装の食堂車クイーンアデレードレストランに移動して、3品コースのランチ。ローカルの食材を生かした料理の洗練された味付けに驚く。香ばしいチキンとヒヨコ豆のサラダ、それにミントをちょっと効かしたヨーグルトソースのコンビネーションに感動。

キャサリンの駅からクルーズの発着場までは、バスで30分ほど。

 ランチが終わると、ほどなくキャサリンの駅で3時間ほど停車する。その間にオフ・トレイン・ツアーというアクティビティがあって、ニトミルク国立公園にある切りたった断崖の間を船で行く、キャサリン渓谷クルーズに参加する。

左:崖の上の見晴らし台から手を振ってくれる人も。
右:川幅が広いところは静かだが、下っていくと、少し波立つような急流も。

 乾季だと岸辺を歩いたりもするそうだが、川はこのところの雨で水かさが増して流れも速いので船に乗ったまま。地層がむき出しの崖の間を行く景観クルーズだ。

左:動くホテルラウンジといった趣のアウトバック・エクスプローラーラウンジ。スパークリング、赤・白ワイン、スピリッツ、ソフトドリンクなど思い思いに。
右:アペリティフの時間には、スプーンにのせた洒落たオードブルがサービスされる。

 ザ・ガンに戻って日が傾き始めると、三々五々、乗客がラウンジ車両に集まり始める。バーカウンターがあって、特別なオーダーの場合を除き、ドリンクは料金に入っている。窓の外に流れる風景と暮れてゆく空を眺めながらワインを傾ける人、グループで談笑する人、思い思いの時間を過ごしている。

夕食には、意外とあっさりとしたクロコダイルの肉と、ワイルドな味のカンガルーのステーキで。

 世界の中心ウルルに向かう優雅な列車の旅。ダーウィンからアリススプリングスに行くのに、ゴールドクラスの早割最安値で大人1名料金912オーストラリアドル(運行期間によって異なる。詳細は下記の日本語サイト参照)というお値段だが、ピックアップのバス、行き届いたサービス、贅沢な食事や飲み物が含まれる動くホテルのような豪華寝台列車に乗る体験は、プライスレスな思い出だ。

2016.04.19(火)
文・撮影=小野アムスデン道子