誰かが勢いよく襖を開けたような音
「うわ……なんだよ、この家……」
「マジかよ~」
仕事仲間と足を踏み入れたその家は、玄関先の段階で家財道具がそのまま残されている、言葉を選ばずに言えば“夜逃げしたまま”のような家でした。
流石に靴などはなかったそうですが、戸棚や机に椅子、果てはテレビや冷蔵庫といった電化製品までそのまま残されており、Sさんたちは仕事がタフなものになるとため息を漏らしました。
「めんどくせぇなぁ~もう……」
「まあまあ、文句言っても始まらないし。ほら、じゃあ奥の部屋から運び出すぞ!」
「はーい」
先輩の号令と共に始まった運び出し作業。ダンボールや毛布に家財道具を包んでは数人がかりで外のトラックに黙々と詰め込んでいく。
考えないようにして体だけ動かせば、気づけばほとんど運び出せている、Sさんはこの仕事のそんな単純さが好きだったそうですが、その日の作業はそうやって頭を騙したところで終わりの見えない量だったと言います。
「流石に埒が明かないっすよ、これ……」
「確かにこれはもう少し人数増やしたほうがよかったかなぁ……」
大きな本棚を積み込み終わって部屋に戻った時、いつもポジティブな先輩ですらそう愚痴をこぼして作業の流れが一旦途切れてしまいました。
「というか、荷台もパンパンで詰め込めないっすよね、これ」
「そうだねぇ~……どうしたもん――」
すとん。
荷物を運び出してがらんとした部屋にこだましたのは、誰かが勢いよく襖を開けたような音でした。









