【2日目】祈りの山・大峯奥駈道を辿る。八経ヶ岳登頂

 さて翌日は、近畿最高峰の八経ヶ岳(標高1915メートル)へ。こちらは8〜9時間(約10キロメートル)を要するなかなかハードな山登りなので、奥大和の自然をガッツリ楽しみたい方向けにご紹介しよう。

 八経ヶ岳は、奈良県の吉野から和歌山県の熊野を南北に結ぶ約100キロメートルの大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)上にある。大峯奥駈道は、1300年の伝統を持つ山岳信仰の道で、ユネスコ世界文化遺産に登録されている。「信仰の道」としての登録は、スペインとフランスにまたがるサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路と世界で2例のみだ。

 今回は、弥山登山口駐車場(行者還トンネル西口)から八経ヶ岳への往復ルートを歩いた。早朝に出発。秋のひんやりした風が森を吹き抜け気持ちがいい。足元は苔が美しく、あちらこちらにキノコも見つけられた。紅葉も少しずつ始まっていた。

 大峯奥駈道は、日本固有の信仰である修験道の道。道中には「靡(なびき)」と呼ばれる行場(修行の場)が75カ所点在していて、今回の登山道にも数カ所の靡がある。修験者は、それぞれの靡に「碑伝(ひで)」というお札を納めて祈りを捧げるのだ。

「弥山神社」や天然記念物の原生林を歩き、山頂へ

 尾根を歩いてまずは弥山に到着する。弥山は第54番の行場で、弥山小屋や弥山弁財天社(弥山神社)が建つ。そして弥山から八経ヶ岳への稜線付近にはシラビソ原生林があり、国の天然記念物に指定されている。

 昼過ぎにたどり着いた八経ヶ岳は、第51番の行場でもある。山頂は岩がゴロゴロ、立ち枯れの木々が点在する、荒涼とした風景。行場らしいというのか、なんともいえぬ雰囲気がある。登り始めから山頂まで次々に表情を変える自然が印象的だった。

 秋晴れに恵まれた奥大和の山旅。自然と歴史を全身に浴び続けた2日間だった。とはいえ、ディープな世界の入り口だろう。地元の食や暮らしももっと知りたい。奥大和には知られざるおもしろさがもっともっとありそうだ。