この記事の連載
◆5位『元気でいてね』藤原ハル/祥伝社

結婚、出産と人生の関わりをどのように考えるかを軸とした連作短編集。「子どもを産んでいたら離婚することはなかったのか」と自問する40代女性や、その母親で「専業主婦」を貫いた女性など、多様な人々の葛藤を優しく繊細に描出しています。
ハッとする気づきに満ちていて、各話に名言がいっぱいですが、中でもとりわけ「私たちは何に許されたいんだろうね」という言葉が印象的です。「自分の人生を自分で選ぶ」という考え方は現代ではごく当たり前ですが、それでも私たちは何かにつけ、見えないだれかにおうかがいを立てているのかもしれません。
思いを分かちあった登場人物たちが強くつながることを急がず、適切な距離感で結び合う抑制のきいた態度も好ましい。人間関係構築の一助にもなる一冊です。

◆みんながそれぞれしてきた選択には必ず、その場所なりの苦しみがある。そんな選択をどうやって肯定すればいいのか、考える時間をくれるよい作品だった(元「このマンガがすごい!」編集長・文藝春秋/薗部真一さん)
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CREA夜ふかしマンガ大賞とは…
マンガを愛する選考委員とCREA編集部の推薦により選ばれた「思わず夜ふかしして読みたくなる」そして、「いま、CREA読者に本当におすすめしたい」作品に贈る賞。今年は初めて、15名のマンガ編集者の皆さんに選考委員をお願いしました。2024年7月~25年8月に単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出されます(※選考委員の担当作は推薦不可、現在所属する出版社が発行する媒体の掲載作品は1作まで推薦可)。その他、マンガ好きの著名人の方々が選ぶ「個人賞」もあります。

2025.10.15(水)
文=粟生こずえ
写真=平松市聖