この記事の連載
◆4位『本なら売るほど』児島青/KADOKAWA

つねづね本は人間のようなものだと思っています。だから、本がたくさんある場所はドラマの宝庫なのです。脱サラして古本屋を始めた「十月堂」の店主の毎日には出会いがいっぱい。
亡き夫の蔵書である『寺田寅彦全集』を持ちこんだ老婦人を思いがけず照れさせたり、店主みずから勧めた森茉莉を気に入ったいたいけな女子高生を涙ぐませてしまったり!? 着物姿で『半七捕物帳』を購入する粋な女子、ネットではなく古本屋で今日の一冊を探す行為に宝探しのロマンを感じるおじさん等々。
作家や書名がたくさん登場するので「こんな人がこんな本を楽しんでいる」イメージがふくらんで……。本の世界に耽溺する悦楽を分かち合える、モノとしての本を愛する仲間のもとに行きたくなります!

◆森茉莉『恋人たちの森』の「枯葉の寝床」の一節が描かれるシーンがとても美しいので、森茉莉ファンの方に超おすすめです。(KADOKAWA ハルタ編集部/芝 泰穂さん)
◆電子ではなく紙の本だからこそ、偶然の出会いや温かなドラマが広がるのだと感じました。(文藝春秋 コミック編集部/下中佑歌子さん)
2025.10.15(水)
文=粟生こずえ
写真=平松市聖