Charaが後進女性アーティストに与えた影響は?

山口 僕は「Chara以後時代」と言うことがあるのですが、そんな風に思えるくらい、彼女のヴォーカルスタイルは女性アーティストに大きな影響を与えています。おそらくライフスタイルやファッションで影響を受けた女性ファンも多いのでしょうね?

伊藤 ChristならぬCharaですね(笑)。いまでもたまにメディアで見かけることがありますが、素敵でカッコイイ女性でありアーティストですよね。

山口 母でもありながら、若い頃と佇まいは変わらないのがすごいですよね。さて、そんな19年ぶりのYEN TOWN BANDの新曲から、どんな妄想分析が生まれましたか?

伊藤 早朝の校舎、少女はモノクロの階段を踏みしめた。最後の一段をのりこえて、氷のドアを開ける。空と街は静まりかえり、風だけが少女に話しかける。もう終わりにするの?

 金網越しに戦車のような建物たちを見下ろすけど、そこに温かいヒカリなんてみえない。校舎の肌についた銃弾のような痛々しい傷のほうがよっぽど温かいと少女は思う。風がまた騒ぐが無視をする。ふと、デコボコの地平線の向こうに誰かを感じる、その誰かに声をかけてみたいと思う。遥か遠く西にいる……たぶん少女と同じ年くらいの少年。崩れたコンクリートと鉄屑の山に立ち、埃の竜巻に目を細めるその少年に話したい。自分のなくしたもの、あきらめたもの、すてるもの。そして聴きたい、少年のなくしたもの、あきらめたもの、すてるもの。太陽の気配のなか、少女はかすれた声で小さな歌を風に乗せてみる。さよならの代わりに届けたいメッセージを。

山口 映像的ですね。岩井俊二監督にショートムービーにしてもらってください(笑)。

YEN TOWN BAND「アイノネ」
ユニバーサル ミュージック 2015年12月2日発売
通常盤[CD]1,000円、初回限定盤[2CD]1,500円(税抜)
■YEN TOWN BANDは、1996年に公開された岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』の劇中に登場する架空のバンド。2003年には小林武史がプロデュースを手がけたイベントに登場し、初のライブを敢行。その後は休眠していたが、2015年9月に行われた「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」閉会前夜のイベント出演で復活をとげた。
■「アイノネ」作詞・作曲/Takeshi Kobayashi
■オフィシャルサイトURL http://www.universal-music.co.jp/yen-town-band/

2015.11.29(日)
文=山口哲一、伊藤涼