音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
藤巻亮太「ing」

「粉雪」と「青春アミーゴ」が競っていた時代

伊藤 今回採り上げるのは「ing」。藤巻亮太っていうとピンと来なかったけど、レミオロメンのヴォーカルですね。「粉雪」で大ヒットしたときは、小林武史のプロデュースで凄いバンドが出てきたっていう印象でした。

山口 レミオロメンは、全く無名の頃にデモテープを聴きました。これは売れるバンドだと思って、ライブに行こうとしたら、烏龍舎とビクターで事務所もレコード会社も決まっているという話を聞いてあきらめた記憶があります。情報が遅かったです(笑)。

伊藤 そんなことが(笑)。レミオロメンのデビューにあたって、事務所やレコード会社の争奪戦があったという噂は聞いていましたが……。それにしても、それだけ声が掛かっていたということは、相当なポテンシャルを感じるデモテープだったんでしょうね。僕がプロデュースした修二と彰の「青春アミーゴ」と同月に「粉雪」がリリースされたので、歌番組なんかでもよく彼らを見かけました。それに両曲ともに同クールのドラマ主題歌で、「野ブタ。をプロデュース」に山下智久、「1リットルの涙」に錦戸亮というように、やはり僕がプロデュースをしていたNEWSのメンバーが出ているという感じで、個人的にも熱い冬でしたね。世間的にも「粉雪」vs.「青春アミーゴ」と良く言われましたしね(笑)。

山口 なるほど。両方とも日本人の情感に訴えるという意味では共通性があるかもしれませんね。「粉雪」のサビの頭の「こなーゆきー」は、一度聞いたら耳に残りますよね。

伊藤 ですね。どれだけの人が「こなーゆきー」を熱唱したことか。当時はカラオケの定番でしたし、これを歌えないと歌ウマ男子じゃなかったですね。久々に彼の声を聴きましたが、やっぱり良い声。ただ、メロディといい世界観といい楽曲自体は昔と変わらず、という感じで“新しい藤巻亮太”という印象は受けませんでした。まぁ、でもそこにジャパニーズロックの良さがあるんですが。

2014.12.14(日)
文=山口哲一、伊藤涼