音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する。
2013年9月にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲はこちら!
【2013年9月に流行る曲】
miwa「Faraway/Kiss you」
デジタル技術と職人的勘を組み合わせてヒットを予測する
山口 1カ月後にヒットする曲を事前に予測して、その理由を解説するという、めちゃくちゃ難易度が高いテーマを掲げてしまったのだけれど、大丈夫かなぁ?(笑) CREA WEBからの依頼が嬉しくて、すぐ受けちゃったけれど、今さら、心配になってます(笑)。
伊藤 もともと「ヒットは水もの」なので、出してみないとわからない。それがリリースされる前に予測するというのだから、かなりチャレンジングな企画ですよね。
山口 「RUSH」というブログ解析の仕組みに基づいて作られた新曲期待度チャートや、「Shazam」というイギリスの楽曲検索アプリで探された曲のチャートとか、まもなく日本でもはじまる「Twitter #Music」とか、ネット上のユーザーの期待度が指数化されてきているので、その辺を参考にしながら、僕らのクリエイティブな視点からの感性を加えて、曲をピックアップ、その面白さ、ヒットするだろう理由を分析しようという意欲的なコラムです。
伊藤 デジタル技術と職人的勘の組合せですね(笑)。
山口 その記念すべき第1回はmiwaですか?
ギターを弾きながら歌う姿を見て、印象が変わった
伊藤 miwaというアーティストを知ったのは、けっこう最近で、昨年の夏ごろ観ていたTVドラマ「リッチマン、プアウーマン」がきっかけでした。ドラマがヒットしたこともありましたが、そこに流れていたテーマソング「ヒカリへ」も効果的に使われてドラマを盛り上げる良いスパイスだなーと。その後は楽曲も一人歩きし始めて、まだ認知度の低かったアーティストとしては、かなりのインパクトを残しましたよね。
山口 「ヒカリへ」はヒットしたよね。事務所社長は、お世話になった方なので、miwaの存在は、以前から知っていました。高校時代からシンガーソングライターとしての活動を始めて、2010年にデビューしているので、意外にキャリアは長いよね。ちなみに、事務所社長は、日本では草分けの超大物映画プロデューサーです。珍しいタイプのマネージメント会社ですね。俳優の小栗旬さんも所属しています。
伊藤 なるほどー、色々と合点がいきました(笑)。
山口 才能豊かだけれど、ブレイクに向けて、苦労している印象だったので、こういうヒットの仕方もあるんだなと思いました。まだ若いアーティストですが、粘り勝ちという感じもしてます。
伊藤 そうだったんですね! 意外でしたけど「ヒカリへ」はすでに9枚目のシングルでしたもんね。それに、イマドキのサウンドと伸びのある歌声が印象的ではあったんだけど、どちらかというと元気ロケッツやMiChiのような、プロデューサーによって作り上げられるタイプのアーティストなのかなぁと、そのサウンドからは漠然と思ってたんですよ。だけどその後、なにかの歌番組でmiwaを初めて見たときに、彼女がギターを弾きながら歌っている姿を見て、「なんだぁ、ぜんぜんシンガーソングライターじゃん!」って思ったのを覚えていますね。
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2013.08.29(木)