ベンチャーズ歌謡のミューズによる「京都ひとり」
2曲目は、渚ゆう子の「京都ひとり」。
渚ゆう子といえば、今をさかのぼること45年前、世界中にエレキブームを巻き起こしたベンチャーズのレパートリーだった「京都の恋」「京都慕情」に日本語の歌詞を付し、大ヒットさせたシンガーである。
なお、同様のシステムで作られたベンチャーズ歌謡には、欧陽菲菲「雨の御堂筋」、山内賢・和泉雅子「二人の銀座」など名曲が多い。グループサウンズと並走したムーブメントとして、確実に時代を画している。
その渚ゆう子が、1997年に「京都ひとり」なるシングルをリリースしていたとは。浅学にして存じ上げませんでした。謝ります! 額を畳にこすりつけて土下座します!
表題曲の作曲を手がけたのは、「吾亦紅」をヒットさせたシンガーソングライター“すぎもとまさと”名義でも知られる杉本真人。小柳ルミ子の「お久しぶりね」など、ドメスティックな歌謡曲的メロディをダンサブルなビートにのせる手腕には定評がある。
ちなみに、2007年に紅白出場が決定した杉本氏について、和田アキ子が「アッコにおまかせ!」で“まったく知らない人”と斬って捨てておきながら、その直後、かつて自分のシングル2曲を作曲していたことを知らされ、土下座したことは鮮烈に記憶に残っている。
話を戻す。この「京都ひとり」は、ベンチャーズが日本の音楽界に残した歴史的遺産に対するリスペクトに満ちている。
テケテケテケテケといったベンチャーズ印のギタープレイはもちろん、「京都の恋」からダイレクトに引用した間奏のフレーズも心憎い。京都という街のはらむエキゾティシズム、そしてノスタルジーが前景化されたこの楽曲には、外国人観光客が増えた21世紀の古都をいかにアピールすべきかについての絶好のヒントが存在するのではなかろうか。
そんなわけで、CREA11月号「京都ひとりガイド」には当然のように「京都ひとり」を歌う大月さんと渚さんが大フィーチャーされているのだろうと思い、震える指先で全頁をめくったのだが……どこにもこの2人は載っていなかった。
残念だ。失望した。全然「京都ひとり」ガイドじゃないじゃないか。でも、特集自体は大変充実していたのでためになった。大月さんと渚さんの熱狂的なファン以外にはとりあえず激しくおすすめしておきます!
もしも、来年CREAが「京都ひとりガイド」なる特集を組む際には、絶対に大月さんと渚さんを登場させるよう、この公開の場で編集長に提言しておく。俺は絶対に忘れないからな!
2015.11.01(日)
文・撮影=ヤング