オーナーが目指したのは世界で唯一のホテル

左:レセプションまで上る階段には、様々なメッセージが書かれている。
右:ロゴ入りのレセプションカウンターで出迎えてくれたのは、「CREW」(乗務員)という名札を付けたセバスチャンさん。オープン当初からのスタッフだ。

 レセプションは2階、というか、機内に入るためにはドアの高さまで上る必要がある。荷物がある場合はエレベーターで。階段で上ると、「無料シャトルバスあり」、「朝食は3時から」、「機内は土足厳禁」などといった注意事項が書かれている。朝食が早いのは、早朝のフライトに乗る人のため。空港内のホテルならではだ。

 ドアを開けると、「CREW」(乗務員)と書かれた名札を付けた日本びいきのセバスチャンさんが出迎えてくれた。なんと、お母様は大阪で生まれたとか。

レセプション前では、ロゴ入りのカップからスーツケースまで、様々なオリジナルグッズが販売されていた。

 「ジャンボ・ステイ」は、2009年にオープンした。オーナーのオスカーさんは長期休暇中でお目にかかることができなかったが、ファーストレセプショニストのセバスチャンさんに話を伺った。ホステル(バスルームが共同の宿泊施設)を経営していたオスカーさんは、他にないユニークなホテルを造りたいと思っていた。そこで、空港内に約6年間も駐機したままになっていたジャンボジェット機を、ホテルにできないかと思いついたのだという。

 空港に交渉して機体を買い取り、空港敷地内の土地を借りて機内を改造し、ホステルとしてオープンしたのが2009年1月のこと。その後も、少しずつ改装が重ねられている。取材時には翼の下のエンジンルームに新たな客室を造る工事が進められていた。まるで日本のカプセルホテルを思わせる客室で、トイレとシャワーは機内まで行く必要がある。場所柄、トランジットの数時間眠りたい人や、少しでも安くという人にはお勧めだ。

1階の機首部分はダイニングルームになっている。朝食は午前3時から。夜はバーとして午前1時までオープンしている。

 この機内でもっとも広い空間は、1階の機首部分にあるダイニングルーム兼バー。ブルーのカーペットに白いテーブル、オレンジのイスという配色が目を引く。壁には、1976年にシンガポール航空のフライトでデビューした頃から、パンナム、エアアジアなど、2002年に引退するまでにこの機体が歩んできた変遷が、写真で飾られている。

左:朝食の内容はこんな感じ。ジュースやコーヒーなどの飲み物と、パン、ハム、チーズ、トマトやキュウリなどの野菜、ほかにゆで卵だ。
右:機内食が入っていたワゴンも有効活用されている。螺旋階段を上ると2階のコックピットスイートがある。

 そしていよいよ、機内唯一のスイートルーム「コックピットスイート」へ!

コックピットスイートへと上る螺旋階段。現役時代の階段がそのまま生かされている。

2015.08.25(火)
文・撮影=たかせ藍沙